佐野洋子著「シズコさん」

 昨日夕方病院へ電話して、先週の採血時のIGGの値を聞く。 2110→2530→2238と下がっていたのだが、その数値を聞いてホッとした。 もし値がこれまでのペースで3000ぐらいにまで上がっていたらどうしようかと思っていた。 ここのところ採血のデーターは悪くなる一方だったこともあるが。 次の回の採血の結果次第だが、その時にさらにいくらかでも下がっているとするならば、このままサリドマイドを続けるのも悪い選択ではないことになる。 次のレナミドマイドはサリドマイドの前躯体で、いわば親戚筋みたいな薬だから似たような結果が出て、せめて2000を切ることを期待したい。 ただサリドマイドの副作用がじわじわ出てきている。 足の痺れは少しずつ増しているし、口内が乾き咽喉が痛くなる、味覚がおかしいなどなどと、もう一つやる気が出てこないでボーットしているなどなど。 ここのところの暑さで亡くなる人が急増して都会の火葬場では焼却するのに一週間待ちとなっているところもあると聞いている。

 この間佐野洋子著の「シズコさん」を読んだ。 佐野洋子、ン?・・・どこかで聞いた名前だなぁと思っていたら、昔「100万回生きた猫」という絵本があって、その絵本の作者だったことを思い出す。 当時少し話題になっていたので、前妻がまだ子供だった息子や娘のために買ったのだろうと思うが、いろんな面で新しい話題性を持っていた。 まずその本の大きさで、当時は絵本というとコンパクトなものが多かったが、その中にあっては飛びぬけてサイズは大きかった。 また、その中の絵だが・・・子供向けの絵本はファンタジー調の淡い色調が多い中で、この作品はベッタリとした濃い色調で力強く描かれていた。 文章も子供向けというより、大人を読者にしているかなぁと思える内容であった。 そのような話題性もあって、熱烈なファンが生まれ当時の絵本としてはかなり売れていたようだ。 そうであったのだが、オフ個人としてはあまり好きな作ではなかった。 それには理由があって、今手元に作品がないので何処と指摘することは出来ないが、話の中に論理矛盾するところがあって、何だこれは!と気になってしまい素直に楽しんで読めなかった。 普通はそんなところがあっても、フィクションだからと無視して読み進んでしまうのだが、時々そのことがどうしても引っ掛かってしまって楽しめないことがある。

 さてシズコさんというのは佐野洋子の母親のことで、娘が母親のことを書いたノンフィクションである。 ところがこれがまた何ともいえない混乱なのである。 よくおばさん話というのがあって、どうなの?こんど出来た角の中華屋は?そう餃子が小さくて数が少ないの・・・ところで金曜日の**に出ているあのタレント少し生意気じゃない・・・ねぇねぇここだけの話だけど、あそこの奥さん怪しいらしいのよ・・・そうなのよ、また少し太っちゃって明日からダイエットだわ・・・と取り止めもなく話があちらこちらに飛ぶのだが、話す方も聞くほうも当たり前のように自然に受け流している。 「シズコさん」はそのような調子で文章で綴られている。 ある程度読み進むとその辺の事情が分かってくるが、冒頭からそんな調子で始まるから、最初は何がなにやら訳が分からない。  まあ、佐野洋子という人の頭の中は、整理されないままガチャガチャといろんなものが積み込まれていて、アレは確かあそこにあったわ、とそのつど彼女流に引き出してくるとでも言えばよいのか・・・だから話は過去に飛んだり、同じ話が何度も何度も繰り返されたりする。 しかし整理されていない魅力というか、される前の生の感じがモロ出ていて、下手に整理して書かれたモノより面白く、人間という矛盾に満ちた実像により迫っているなぁと思った。