NKT細胞

 病院を受診した。 骨病変の指標であるIGGの値は前回は前々回よりも2453→2118と少し下がっていた。 ということはサリドマイドが少しは効いているということになる。 今日の採血の結果の値はまだ分からないが、少し安心である。 その他の値、白血球や血小板、ヘモグロビンなども横ばいか微増であった。 そこでサリドマイドの量が10ミリから20ミリに増えた。 これで標準的な量なのだそうだが、本来なら薬は少ない量で病変が抑えられればそれだけ副作用も少なくてよいのだろうが、とにかくこれで様子見ということになった。
 六月に入り夏日が続き、外はかなり暑い。 病院内はクーラーが効いていたが、かなり疲れてしまった。

 数日前のサイエンスニュースに、IPS細胞を使ってガンを攻撃する細胞を大量作製、というニュースがあった。
 ≪がんを攻撃する免疫細胞の一種「ナチュラルキラーT(NKT)細胞」から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製、このiPS細胞からNKT細胞を大量に作るマウス実験に成功したと、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの古関明彦グループディレクターらが1日付米科学誌電子版に発表した≫ とある。
 ≪NKT細胞はがん細胞を直接殺すほか、免疫にかかわるほかの細胞を活性化させ、がん治療に有効とされるが、数を増やすのが難しかった。iPS細胞から大量に作製し体に戻せば効果が改善するとみられ、同センターの渡会浩志上級研究員は「人間への応用を目指したい」と話している。≫
 皮膚などの体細胞をもとに作ったiPS細胞から免疫細胞へ分化させると、がん細胞を攻撃するのは一部だけになってしまうらしい。 免疫細胞に分化する過程で遺伝子が再構成されて、特定の抗原(攻撃目標)だけに反応するごく普通の状態に戻るかららしい。 そこで今回皮膚の細胞ではなくてNKT細胞から直接IPS細胞を作ったら、NKT細胞が大量に作れることがわかったということになる。 

 免疫機能というのは、細菌・ウイルスといった「外敵」だけではなくガン細胞のような内部でできた「異物」にも反応して排除しようとしている。 また、健康な人の身体でも毎日数千個は癌細胞に変化しているともいわれている。 それなのに誰でもがガンにならないのは、免疫細胞である体内のNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が、常時それらを排除しているため、ガンが発症しないのだとされている。 それでは免疫細胞はどのようにしてガン細胞を排除しているのか。 他の外敵と同じように自然免疫と獲得免疫とで連携して攻撃しているのだが、特に自然免疫のNK細胞はガン細胞を攻撃することにすぐれていて、ガン細胞を発見すると素早く攻撃を仕掛ける。 通常はNK細胞を主とした自然免疫細胞だけで排除できるのだが、自然免疫だけではガンの増殖のスピードが早くて間に合わない場合が出てくる。 そのとき、情報の提示を受けた獲得免疫細胞からキラーT細胞やB細胞が出撃してガンに対して攻撃を加えることになる。 このようにして日常的に腫瘍が発生するのを未然に防いでくれているために、通常はわれわれはガンに侵されないでいれる訳なのだ。 今回そのNK‐T細胞をマウスの実験で大量に作れることが分かったということであるが、次は人間への応用ということになるが、それまで生きておれるかが問題だ。