スプリング8

 週末前に退院にはならなかった。 骨髄穿刺(マルク)をした木曜日の夜、これまでに比べるとたいした熱ではないが、37・5度まで熱が上がった。 熱は夜中に寝汗をかいたせいで朝には36・5度までさがっていた。 だが、金曜日の朝の採血の結果CRPが(3・6→2・8)わずかしか下がっていなかった。 医師が来てどうしましょうか、と聴くので、週末は外泊させてもらって日曜日の夜病院へ帰り、月曜の朝の採血の結果を見て決めたい、と提案すると、それがよいでしょう、となった。 と言う訳で今日は家に帰って使いにくいノートパソコンで書いていない。 来週初めの採血の結果で入院が続くか退院かが決まる。 それにマルクだったが、それだけかと思っていたら、その後生検と言って骨髄の一部を採取するのもあった。 麻酔をしたままの状態でおこなうのでさほど痛くはなかったが、受けながら水炊きの時の鶏肉の骨の内部の赤いところ、あれの一部を取っているのだなぁと思っているとさすがに気分の良いものではなかった。 医師としても抗がん剤の7クール目あたりで骨髄生検をして骨髄のいろいろなデーターを取っておきたかったのだろう。 それが今後のオフの治療や一般的な医療のためになったりするのなら、あえて生検を拒む理由はない。

  少し前のサイエンスニュースに <動物と細菌、呼吸酵素の違い解明>というのがあった。
 ≪生物が生きるためのエネルギーをつくり出すのに欠かせない細胞内の「呼吸酵素」の構造は、動物と細菌で一部異なることを兵庫県立大の吉川信也教授(生物化学)のチームが解明し、12日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した≫というものである。
 サイエンス・ニュースとしては扱いは小さかったが、この発見は将来臨床医学に革命をもたらすかもしれないような気がする。 これまでは生物の種類にかかわらず呼吸酵素はみんな同じ構造と考えられていたのだが、それが動物と細菌では少し違うとするなら、その違いを利用すれば、体内などで病原菌のみを死滅させる薬の開発につながることが期待出来るからだ。
 この研究は大型放射光施設「スプリング8」で解析されたとある。 スプリング8は御当地兵庫県の田舎にある世界最高峰の放射光を発生させることの出来る施設で、オフは観ていないが最近映画「神様のパズル」で施設が撮影に利用されたことなどで知られた施設である。
 ≪呼吸酵素は「シトクロム酸化酵素」で、細胞内の小器官ミトコンドリアの膜にある。呼吸で取り入れた酸素と、水素から水を合成し、陽子(水素イオン)を膜の外にくみ出すなどして最終的に活動エネルギーをつくる。 チームは、大型放射光施設兵庫県)で、人間とほぼ同じウシの心臓の細胞を使い、陽子を一定方向に輸送させる経路の構造を、アミノ酸配列に着目して解析。≫
 今後は細胞の内部にまで科学のメスが入って、いろいろな治療が可能になるだけでなく、治療に伴う副作用や後遺症に悩まない治療法が確立されることが期待できる。