エドガー・アラン・ポーの詩
ステロイドが抜けてきて月曜日、火曜日は身体がだるい。 一時のように下痢はないのだが身体がだるいので、終日ダラダラと寝てばかりである。
「黒猫」「アッシャー家の崩壊」「モルグ街の殺人」などの怪奇小説で知られるアメリカの作家、エドガー・アラン・ポーが書いた最後の詩に「アナベル・リー」http://pinkchiffon.web.infoseek.co.jp/book-AnnabelLee.htmという詩がある。
昔むかしのこと
海のほとりの王国に
乙女がひとり暮らしていた。そのひとの名は
アナベル・リー──
乙女の思いはたた一つ
ただひたすら、ぼくを愛し、ぼくに愛されることだけだった。
この海のほとりの王国で、
彼女は子どもで、ぼくも子どもだった。
けれど、愛にも勝る愛で愛し合っていた──
ぼくとぼくのアナベル・リーは──
天国の翼ある天使たちさえも
彼女とぼくを羨むほどに。
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この詩は書かれた2年前に亡くなった妻ヴァージニアへの作家ポーの哀切な思いが綴られている。
この二人が、つまりポーとヴァージニアが結婚した時、ポーは27歳だったが、若い妻ヴァージニアは13歳だった。
花嫁であるヴァージニアのあまりにも若すぎる結婚に対して廻りからの風当たりが強かったらしいが、ポーは彼女に対して「私の恋人、私の優しい妹、私の可愛いちっちゃな奥さん・・・・ 」などという優しい思いを込めた内容の手紙を送って求愛している。
しかし、結婚から6年後、ヴァージニアはピアノを弾きながら歌をうたっているときに喀血。 そして貧しさの中彼女は24歳の若さで結核で死んでしまう。 その後、ポーの生活はかなり荒んだものとなっていったらしいが、ヴァージニアの死から2年半後、ポーもまた40歳で亡くなっている。
ヴァージニアが死ぬ直前に、ポーに対して語りかけたという言葉が残っている。
「私が死んだなら、あなたを守る天使になってあげる。 あなたが悪いことをしそうになったら、その時は両手で頭を抱えるの。 私が守ってあげるから……」 なんとも幼く、いじらしい。
ポーが20歳で発表した第二詩集に花嫁を詠った「ソング」という詩がある。
「ソング」(壺齋散人訳)
ぼくは花嫁姿の君をみた
君の頬は恥じらいで赤く染まる
君の周りには幸福が溢れ
前途には愛が輝いてるというのに
君の瞳に燃える光が
それが何であるにせよ
ぼくにはつらい色に見えた
それが愛の光だったらよかったのに
頬を赤らめたのは乙女の恥じらい
やがては消えてなくなるだろう
けれどそれは燃え立つ炎のように
青年の心を焼き尽くしたのだ
なぜなら青年には花嫁の頬の
恥じらいの色がつらかったから
花嫁の周りには幸福が溢れ
前途には愛が輝いてたというのに
花嫁の出発を詠っているのに、不吉な感じが出ているのは何故だろう・・・
この詩の中に登場している花嫁というのはポーの初恋の相手で、エルミーラという名前の少女だった。 17歳のポーとエルミーラはまだ若いながら深く愛し合っていて、ポーが大学に入るため離れ離れになったが、文通を通じて愛を確かめ合おうと誓い合っていた。 ところがエルミーラの父親はポーを嫌い、ポーからの手紙を娘に取り次ごうとしなかった。 一方ポーの養父もエルミーラからポーに宛てて出された手紙がポーの眼に触れることのないよう、大学当局に働きかけた。 こうした事情を知らないふたりの恋人たちは、互いに相手の心を信じようとしながらも、いつの間にか気持ちが離れていった。 ポーが田舎に戻ってみると、エルミーラは他の男と結婚式を挙げているところだった。 この詩はそんな背景の中で書かれたようである。
ポーは妻ヴァージィアが亡くなった後本人が亡くなるまでの二年間半の間に、故郷へ帰ってこの初恋の女性エルミーラと再会している。 そしてポーは二人が再び結ばれあうことを誓い合っているのである。 再開した時エルミーラは夫と死に別れて寡婦になっていたらしいのだが、二人の再出発は実現することなく、その前にポーは亡くなってしまった。