医療費

 気が付けば四月になっていた。 三月去るだが、昨夜夕方頃から風が強くなり、今朝見るとちょうど満開になっていたマンション内の桜が少し散っていた。 マンションには山の斜面にはもう一本の桜の木があってまだ五分咲きぐらいだったので、さいわいこちらは散らなかったようである。 嫁さんは最近ジグソーパスルに凝っている。 以前にオフがアッチャンにプレゼントしたパズルなのだが、360ピースと1000ピースがある。 最初は360ピースをやってこんなの楽勝だわと言って1000ピースに挑戦したのだが、これがなかなかたいへんで少しも進まない。 それでもジグソーパズルをやっている時だけ、母親やアッチャンの死のことを忘れておれて気がまぎれるようである。
 九州あたりで採れた今年の筍が少し安くなったので、買ってきて茹でて筍御飯を炊いた。 糠を入れて茹でたのだが、ほんの少しエグミがあって、まさに春の味を賞味できた。
 来週末、田舎の友人たち三人がお見舞いに来てくれると言う。 彼らは淡路島の民宿で宿泊すると言うので、嫁さんと娘と三人そこに加わって海の幸をともにする予定にしている。 彼ら三人は小、中、高と同じ学校に通った気のおけない同級生で、一昨年もがんセンターへ入院したオフを見舞いに来てくれた。 昨年はオフがお盆に田舎へ帰った時に、同窓会や山の家で逢って酒を飲み交わしている。 年に一度程度の顔合わせだが、まさに友遠方より来る、また楽しからずや・・・の心境である。
 今日病院へ行って点滴を受ける。採血の結果も感染を示すCRPの値が0・8(標準0〜0・5)とやや高かった以外は、前回と大差なくまあまあであった。 これで7クール目の点滴が終わり、来週は一週お休みでその次の週から8クール目に入る。 医師から8クール目から点滴量を一段下げてみましょうか、と提案がある。 副作用のことを考えれば、こちらは一も二もなくOKである。 最初は2・3ミリグラムから始まったが、現在が1・8ミリグラムで次回からは1・3ミリグラムになるのである。 ところが薬の量は0・5ミリグラム減っているのに、会計で支払うお金は前と変わらなくて相変わらず一回につき約6万円である。 これは3割の国民保険が効いて6万円だから、保険がなければ一回につき20万円ほどの薬代なのである。 今日は四月なので今月から会計の窓口で診療明細書が渡された。 それを見ると注射料の点数が17168点(診察料の合計が18082点)となっている。 今日窓口で支払った金額が65890円だから単純に考えても点滴に6万円以上掛かっていることが分かる。 高いのは薬の値段だから仕方ない面があるが、その量が減っても同じ料金だというのが納得いかないので、ケモと呼ばれている外来治療室の看護婦さんに、どうしてなの?と聞いてみた。 薬は減っても3ミリグラムが単位のアンプルなので、残りは廃棄するので料金は変わらないのよ、というあっさりとした返事である。 エエ〜ッ廃棄してるのか!薬の値段知っている?と聴いてみると、知らないわ、という返事である。 保険がきいて6万円だから、正式には3ミリグラムで20万円もする薬なんだよ、と言うと、嘘ッ〜ソ、そんなに高いとは知らなかったわ、となった。 現在オフは一回につき1・8ミリグラム点滴しているから、残りの1・2ミリグラムは廃棄されていることになる。 たしかに点滴は一回につき6万円でそれを月何回受けても、一人当たり月額26400円を超える医療費は高額医療になって行政に申請すると払い戻されることになっている。 だからと言って20万円もする高い薬を半分近く廃棄するのはどうかと思う。 結局、それは国が支払うのだからどうでもよい、と言えばそうなのだが、税金が無駄に使われていることになって、最後のツケは国民に来てしまうのだ。 こんな高い薬を薬剤会社が3ミリグラム単位にして販売いることがおかしいのである。 せめて1ミリグラム単位のアンプルにすれば、今回の場合、会計で支払うお金も2ミリグラム分だけで済むことになるし、廃棄する量も0・2ミリグラムとなって、税金の無駄払いがかなり少なくなるはずなのだが・・・