「百万円と苦虫女」

 二日前月曜日の夜、足に痺れと神経痛が今までになく強く出て来て、そのために夜はよく眠れなかった。 この先ズットこれが続くのかと思って不安な夜を過ごしたのだが、翌日から少しずつ痺れも痛みも引いていった。 点滴で入れた薬が徐々に抜けていったのだと思うが、正直ホッとしている。 現在マンションの細長いリビングと日本間の間の仕切りを取り外し日本間のところにベッドを置いてそこで昼夜寝ている。 ベッドは介護会社よりレンタルしているパラマウント式のベッドで、賃料は月千五百円である(十年借りても買うよりはかなり安い)。  ベッドで寝たままでいると少しずつ足の痺れが強くなったり、ピリピリとする神経痛が出てくる。 そこで気分転換もありリモコンを使って頭を上げてベッドを背もたれにしたり、それにも疲れれば倒したするのだが便利である。 テレビなどを見るときはなるべくベットではなくてソファーで見るようにしている。 ソファーでもしばらくすると痺れは痛みは出てくるし足がだるくなる。 立つている時が一番痛みや痺れから解放されているようなのだ。 そこで料理などをすることになるが、せいぜい続けて立つているのは30分から1時間ほどで、それ以上は疲れてしまい、再びベッドのお世話になる。
 ケーブルテレビで映画「百万円と苦虫女」を見た。 主演していた蒼井優という女優は以前岩井俊二監督の「リリィシュシュ」や「花とアリス」に出演していたのを見たことがあるのだが、まだその頃は年若かったが役者としてのキラキラ光る素質が感じられた。 今回の映画では彼女もかなり大人になったなぁと思わせたが・・・ちょっとした仕草などに役者として確実に育ってきているなぁと感じとれた。 「百万円と苦虫女」は今の若い人たちのお互いに執着しない関係というか、相手にのめり込むのをどこか拒んでいる関係というか・・・そのあたりをまあまあ上手く軽く表現されていた。
 最近の若者は草食系男子などとわざわざ呼ばれて、男女の関係への執着のなさや淡白さを強調されている。
 そんな若い世代とは違うのだが、オフの下の息子も三十歳に差し掛かり昨年末ぐらいいから婚活を始めている。 話を聞けば女性に対しては何処か淡淡としているところがある。 お互いに相手の領域に無理に入らないかわりに、相手にも自分の領域に入って来てもらいたくない。 そこでは自分は隠されていてさらりとした関係というか、お互いに傷つけ傷つくこと、つまり傷つけ合うことを避けあっている関係といえる。  そうなってきた背景にはいろんな要因が考えられるが、かって学校現場などで虐めがマスコミなどで話題化して来た世代で、虐めを極端に避け忌避した世代だったという背景もあるようだ。 それにくわえて価値観が多様化して、個人が個別化しライフスタイルが個人化して来ている現実もある。 これまでは社会全体に通用する共通な規範というか縛りがあって、それに寄り添って生きていればよかった。 またそこに違和感を感じていたとしてもそれを隠蓑にしていれば、つまり一般的な何かに装って隠れていれば自分を隠せたという逃げ道もあった。 それに加えてさらにややこしいのは昨今ではPCや携帯などを通して情報化社会が急速に発達して、現実上のコミュニティとウェブ上のコミュニティの両方に人は所属するようになっている。 息子が言うにはメール上の本人は良いのだが、現実の本人とのギャップが気になってしまう・・・と、それはお前も同じだろう、と言いたいが(笑)。 ウェブのコミュニティが持つバーチャル性や匿名性の自由さと現実の不確かな曖昧さとのギャップ、今後現実離れてバーチャルの関係にのめりこめば人と人のコミュニケーションがますます取り難く、現実上の関係が希薄になっていくことだけは確かだろう。