トーピン税

 最近世界的なニュースの中にトービン税という言葉が時々顔を出す。 このトービン税とはいかなるものか、ウイキペディの説明は曖昧なので、違うところからhttp://altermonde.jp/tobin1_htmlの引用を載せると
 ≪トービン税とは、投機的な短期資金の移動を抑制する目的で提唱された税制です。ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・トービン博士の名前からこう呼ばれています。仕組みは、すべての通貨取引にきわめて低率の税を課すシステムです。短期的な投資収益を狙って頻繁に資金を移動させればさせるほど、税率が高くなります。一方、工場を作るとか会社を経営するとかの長期的な直接投資には超低率の課税のままなので実質的影響が少なく、投機的な短期資金の移動だけが抑制されることになります。≫
 ただこの説明の中に<頻繁に資金を移動させればさせるほど、税率が高くなります>とあるが、間違いではないかと思う・・・頻繁に資金を移動させればそのつど税金を払うために累積される税金が馬鹿にならない額になるのであって、税率は変わらないと思うのだが・・・
それはそれとして、説明は続く 
 ≪ところで、すべての通貨取引、つまり国際間の金融取引は年間300兆ドルにも及ぶといわれています。1日あたりにして1兆ドル、つまり100兆円(!)強という巨額な資金が地球上を移動していることになります。そしてその取引の90%以上が投機的な短期資金なのです。ですから、この短期的資金の移動の抑制は焦眉の課題といえましょう。
 一方、超低率の課税とはいえ原資が巨額ですので、税収も莫大なものとなります。そこで、この税収に注目したのがNGO(非政府組織)です。国際公共財として途上国の貧困対策や持続可能な開発のための資金に使用すべきではないかと提案しています。 すべての国際金融取引に、例えば0.05%課税しただけでも年間で500億ドルの税収が上がる計算となりますが、これはちょうど世界のODA(政府開発援助)資金とほぼ同額となります。ですから、トービン税は「もう一つのODA」と呼ぶこともできます。≫

 なるほどなぁ・・・である。 オフも少し前、現在の環境問題の解決には、その主な原因が石油の採掘にあるから、掘り出されるすべての石油に一律に税を掛けて、それを環境問題の資金にするというアイデァを思いついて書いたこともある。
 それはそれとして、すべての金融取引に課税するのか・・・このアイデァは少し前まで世界は自由市場主義的な考えが主流だったのでほとんど無視されてきたが、リーマンショック以来主として金融取引に枠をはめようと動いたヨーロッパから提案され、先のG20でも議題になっていた。 また今回のコペンハーゲンのCOP15でトービン税は議論されている。 ただしこのトービン税にはクリアーしなければならない大きな問題がある。 世界各国が同時に導入しなければ効果が出ないという難点である。 もし非導入国がある場合、投機家の資金が非導入国に大量に流入する恐れがあるからである。 
 もしこの税がG20の元で世界が同意して導入されたとなると・・・それがきっかけで現在のIMFIMFもG20内に入っている)を吸収して国連に代わる世界連邦的な組織が立ち上がってくる可能性が十分ある。 現在の国連の唯一の弱点は自己資金を持たないことで、各国の自主的な拠出金頼りである。 もし国連と平行して自己資金を持つ新たな世界組織が新たに立ち上がると、21世紀には世界はブロック化するという筋書きは消えるのではないかと思われる
 今のところ混沌として何がよいのか悪いのか分からないが、少なくともトービン税の導入は世界が緊急に議論して進めるべき重要な課題だろうと思う。 この提案に対して大手金融筋やヘッジ・ファンドは明らかに反対するだろうが、アメリカの共和党サイトや、政治的には一党独裁で経済を市場主義化している中国がどのように動くかその動向が注目される。 とくに中国だが(民主化されない独裁国が大国化してしまった)中国では、COP15で明らかになったのだが、地球温暖化というグローバルな問題に対しても国内の統治的な視点だけで対応に終始していた。 今や中国は経済的には世界の大きな力になっているのだが、その内実は後進国的なマインドのままである。 その原因に中国はいまだ民主化されていないこと、民主化して市民社会が形成されていないことが大きく作用していると考えられる。  すなわち国内的に多様な価値観が育っていなくて、市民社会が政府や政治に暗黙の圧力になっていない訳で、その弊害がもろに出てきていることが考えられる。
 隣人としての日本の政府は中国に対してこれまでのように、ただ単に嫌悪感むき出しに敵対的な対応したり、事なかれ主義的な良い顔だけしているのではなくて、アメリカ以上に中国指導部に強く働きかけ、民主化を進めることの重要さを指摘していかなければならないと考える。 そしてそのことは最終的には日本の重要な安全保障に結びつくので、日本の対中国外交政策の最重要課題となるはずであると考える。