ステンドガラスドア

 3クールの4回目の抗がん剤の点滴の後、体調は日に日に悪くなり一時は最悪だったが、4日経過したあたりから薬が抜けはじめたのか、体調は少しずつマシになってきた。 少し良くなるとそれまで何もやれないでいた反動だろうが、急に何かしたくなる。
 今一番やりたいのは玄関横の6畳の洋間の入り口のドアの取り替えなのである。 べつにそこのドアが壊れているとか立て付けが悪いというわけではないが、取り替えたい理由は玄関が暗いからなのである。 マンションの玄関ドアは重い鉄製の一枚ドアなので玄関へはどこからも光が入ってこない構造になっていて、玄関たたきは終日真っ暗でしょうがなく日中も電灯を点している。 玄関のすぐ横にある洋間への入り口ドアは合板造りの一枚フラッシュドアで、戸を閉めておくと室内からの光が玄関側に漏れてこない。 このドアがもしガラス入りのドアだと少なくとも洋間からの光が玄関に漏れて日中は暗い玄関も少し明るくなるはずなのである。 先日下の階の襖や障子をリフレッシュしてもらうために嫁さんが業者から見積もりを取った時に、ついでにこの階の玄関横の室内ドアの見積りも取ってみた。 ガラス入りの室内ドアを新しくしてもらう見積額は20万円だった。 ガラス入りのドアだし、当然合板のフラッシュドアではなくて無垢材による框ドアなのでそれくらいの値は云うだろうなぁ・・・と思ったのだが・・・だかが木製のドア一枚・・・けっして安い値ではない。 そこで暇に任せ、ネットで木製の室内ドアを検索してみた。 出てくるのは輸入モノの木製の無垢材の框ドアだが、ガラス入りとかステンドガラス入りだとかで、少し良さそうなものとなるとなるとドアだけの値で20万円ぐらいになる。 当然ドア本体を買うだけなので業者による取り付けはなしでそれだけの値がするのである。 それは仕方ないとして、問題はそのドアのサイズである。 西洋の家用のドアなので大体がその高さが2メートルを超えたものばかりである。 最近は日本でも背の高いドアも使われていると聞いているが、当マンションは築30年以上経っていてドアの高さは1・8メートル弱である。 お安いフラッシュドアだと下部を切り捨てることも出来るだろうが、少しましなガラス入りの框ドアだと切り詰めてしまうバランスが崩れておかしなものになってしまう。 あと考えられることは、少々面倒だが壁面の上部を壊してドアの高さに合わせてドア枠を高くすることである。 体調がよければその内に挑戦してみようかと思っていた。 だが、まてよ・・・汚い思いをしてわざわざ壁を壊すよりも、ドアそのものを手前で造ってしまうほうが簡単かもしれないと思った。 そこで今度はネットでDIYの木材を検索してみたら、乾燥したいろいろな木の国産の無垢材が揃っていて嬉しくなった。 おそらくドアを作るなどこれがオフの生涯の最後の仕事になるだろうから、思い切って堅くて良い材料を使ったドアを作ってみたいと思った。 そこでいろいろ検索した結果、ステンドガラス框ドアを作ることに決定した。 二本の縦框にカバザクラ、横三本の框にニレを使い腰板にムクロジ、共に堅い木であるが、を使う案が出来たが、たまたま厚さが36ミリと揃っていて長さも幅も手ごろな材だったからである。 ステンドガラスは強化ガラスで両側からサンドしてあるものを使い、木材とあわせての材料費だけで合計10万円ほどとなった。
 素人でドアなど作るのは難しそうだが、ドア造りはさほど難しい仕事ではない。 問題は横框に二枚ホゾと、それを受ける縦框に二枚ホゾ穴をきっちり作ればしっかりした丈夫なドアが造れる。 そのためには木工機械とホゾ穴を開ける機械があれば素人でもまあまあのものが出来る。 と言うか技量がなくても一番難しいところを機械が作ってくれるからであるが・・・。 かってオフは山の家で10年前そのようにして、生まれてはじめて素人が玄関引き戸ををはじめ、引き戸や障子戸などの建具を数十枚製作した。 いかにも高価そうに見える古民家風な板の帯戸なども、お安く上げるために框に2×4の材を使い、腰板にシナベニアを使って二、三千円そこそこで作ったもんだ(笑)
 それにしても今回の場合機械どころか仕事をする仕事場すらないので、当マンションの和室に青いビニールシートを敷いて、なるべくゴミが出ないように静々と仕事をするしかないだろう。 当然手仕事となり、電動工具よりノコギリやノミなどを使ってのコツコツ仕事となる。
 また一年ほど前に壁を取り払ってリビングと一体にしてしまった和室の床の間なのだが、リビングと一体になったのでソファに座って過ごしていると、床の間に花瓶を置いて花などを飾っても目線が合わない。 そこでこの際床の間の上に分厚い一枚板の棚を作ってソファからの目線と高さを合わすようにしたいと思った。 ネット市場に少し湾曲した耳付きの立派なサクラの一枚板(1700×55×450)があったので、それも注文して棚も造ることにした。 そうなると当然棚の下は地袋となり、小さな襖戸を作ることとになってしまうのだが・・・やれやれ、そこまではなぁ・・・さて、どうしようか・・・(笑) いずれにしろ、オフの手造りした何かをここに残しておく、と考えただけでも嬉しくなってくる。