分子標的治療

 現在オフは多発性骨髄腫という骨髄の癌に罹患して今年の10月より抗がん剤治療を受けている。
 この抗がん剤治療は医学的には分子標的治療といわれている治療法である。 分子標的治療とは体内の特定の分子を狙い撃ちして、その機能を抑えることにより病気を治療する治療法である。 分子標的治療という言葉は、主にガンに対する治療を指して用いられているのだが、ガン細胞と正常細胞の違いをゲノムレベル・分子レベルで解明し、ガンの増殖や転移に必要な分子を特異的に抑えるように仕組まれた療法なのである。 
 ガン治療の現場において従来の抗がん剤治療との違いは、従来の抗がん剤が細胞の殺害だけを目的とするに対し、分子標的治療薬は多くが細胞増殖に関わる分子を阻害してガン治療をしようとするのである。 臨床応用される以前は分子標的治療は腫瘍を縮小させず、増大を抑えると考えられていたらしいのであるが、しかし、実際に分子標的治療が広く行われるようになると、分子標的治療薬は腫瘍縮小効果を示し、それも当初想定していなかった未知の分子が標的となり臨床効果を示す可能性が生まれてきた。 半面毒性に関しても間質性肺炎のように想定していなかった致死的毒性が出る可能性も出てきて、一概に毒性が少ないとはいえないなどの負の面も現れてきたとされている。
 オフが外来で病院に通って点滴を受けているが、点滴されている薬はプロテアソーム阻害剤と言われているもので、正式名はボルテゾミブ、その商品名はベルケイドと呼ばれタケダ製薬が販売している。 ほとんど多発性骨髄腫の治療にのみ使用されている。
 日本でのこの薬が認可されてまだ3年ほどしか経っていないのだが、それまでほとんど薬という薬がなかった多発性骨髄腫の患者とっては延命が出来る福音の薬となった(その後昨年末に続いてサリドマイドも承認認可された)
 しかし、まったく夢の薬というわけではなくて、骨髄の働きを抑制しすぎるので感染に対して体が抵抗力が無くなるし、また末梢神経にあるプロテアゾームにも作用するので、おもに手足などに障害が出て、それが高じてくると手足の感覚が無くなっていったりする。 そうなるとこの薬を続けることは無理となる。
 今回オフは3クール(1クール3週間)目の治療を受けたが、(二週間で4回の点滴をするのだが)最後の4回目の点滴が先週金曜日に入ったが、その後日、月、火と体の痺れが強くて起きているのが辛くてベッドで寝てばかりいた。 このことを医師に報告すれば多分次回の4回目点滴は中止となるだろうと思う。
 痺れたのなんのと言っているが、もしこの薬がなければ・・・おそらく麻薬を使っての痛みをとるだけの緩和治療になっていて、迫り来る死期を待っているだけ日々になっていただろう・・・そのことを思えばまことにありがたいことなのである。