薬の値段

 今週は病院への受診や点滴に行かなくてよい週で、しばらくお休みすることで抗がん剤を体内から抜いてしまう週である。 それだけでかなり気分も身体も楽である。  

 また先日の医療費の話の続きになるが、この後ベルケイド治療が続けられなくなると次に試みられるのはサリドマイドの治療である。 その場合使われる薬の話である。
 いろいろすったもんだをしていたが、日本でもサリドマイドが昨年の末ようやく厚労省から認可されることになった。 それまで患者達はどうしていたかというと、医師などと連携して外国からサリドマイド並行輸入して、その薬を使用していたのである。  それが昨年末より日本でも認可されて一件落着めでたしめでたしだったのだが、それまで個人輸入をしていた患者達は売り出された値段を見てビックリすることになった。 何と日本国内で売られているサリドマイド薬は海外から並行輸入した薬より3〜4倍高い値段が付けられていたからである。 まったく同じサリドマイドという薬なのにである。 ちなみにこの薬は当初は睡眠薬として使われていたことからも分かるように、抗がん剤のように点滴するのではなくて、錠剤であり飲み薬なのである。 当然のことながら睡眠作用があるので夜寝る前に飲むのであるが。 日本で認可されたが厚労省の定めによると、この薬を使う人は医師の指導の下に厳密な管理がいくつも要求されている。 たとえばその一つが、医師が同席した上でサリドマイドのビデオを観ることになっている。 たぶん医師とともにビデオを見ることも医療行為、つまり治療のひとつであって治療費が掛かることになるのだと思う。 そのほか医師や患者のこの薬の管理上のことに関していろいろと定めが厳しいらしい。 まあ、日本においては過去においてこの薬による痛ましい薬害があったのだから少しは分からないわけでもないが・・・。しかしそれだからと言ってまったく同じ薬が値段が3倍から4倍というのは法外な話である。 この薬は国内においてはとある会社が独占販売している。 調べたわけではないがオフが推測するに、この場合製薬会社が不当に儲けているというより、何かの間違いで再び薬害が起きた場合のためその時の救済や保障のために大きな保険が掛けられて値段が高くなっている可能性は十分あると思う。 先進国においては薬害を起こした場合、製薬会社にその保証を求めることに関しては厳しいものがある。 そのあたりの事情は十分ありうると思う。
 薬一つを取り上げても問題は万一の場合の保証を取るか、安い値段を取るかの問題が大きく横たわる。
 アメリカの医療費というのは法外なものがあって、気軽に医療機関に行くのがはばかられると言われている。 とにかく何でもかんでも訴訟社会であるアメリカにおいては、医師が医療ミスで訴えられた時のための大きな保険費用が掛けられていて、それが高いのが医療費が途方もなく高騰した原因の一つだとも言われている。 
 最近オフの田舎でのローカルなニュースに、<臓移植の募金呼び掛け 6歳女児、1億4千万円必要>これはアメリカで心臓の移植手術を受けるための渡航などを含めてだが、1億4千万円の費用が掛かるという、いかにアメリカでの医療費が高いかという話というよい見本でもある。 http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009112401000511.html
 そのアメリカではオバマ政権が高額な医療費で苦しむマイナーな人たちにまともな医療を受けさせる政策のため国民皆保険制度を作ろうとしているが、自己責任を原則とするので今のところその実現はなかなか難しそうなのである。
 余談になるが、、最近のとあるブログに、アメリカのペンシルバニア州で自宅の庭で洗濯物を干していると、他人の洗濯物を見せつけられるのは不愉快だと訴えられて警察に呼び出しされ注意を受けたという話が書かれていた。  http://blog.hix05.com/blog/2009/11/post-1213.html#more
 劇烈な競争社会であるアメリカは、一方えはそれが故に激烈な訴訟社会でもある。 世界がグローバル化するに合わせて日本も少しずつアメリカのそれへとシフトしかけているのだが・・・それが良いことなのか悪いことなのか・・・。 近い将来高齢化社会である日本では、間違いなく医療費の高騰する時代が来るだろう。 そうなれば国家のよる保険制度があっても膨大な医療費を賄えなくなる日が遅からず来るだろう。 それにどうそれに対処していくかという問題が、われわれが近い将来選ばねばならない政治的な判断の選択となってくるだろうことは間違いない。