介護

 17日の受診の際の白血球数がその前13日の39より23とかなり減っていた。 20を切ると菌やウイルスに感染リスクがかなり高まり、日常生活も要注意状態になる。 その17日にベルケイドの点滴を受けてきたのだが、その日の夜は一時間ほどしか眠れなかった。 まあ夜眠れないといっても、一日中ブラブラしている身だから、どうと言うことはないが次の日の夜のため出来るだけ昼は眠らないようにしている。 おかげで昨夜は6時間ほど眠れた。 ここのところ本を読めないとボヤイていたが、内田氏の新刊本「日本辺境論」をアマゾンで買って読み始めた。 これならまあまあ読めるようなので一安心している。 この本は内田氏の久しぶりの書き下ろしだが、内田節全開でかなり読みやく面白く仕上がっている。
 本人も多発性骨髄腫の患者らしいが、おもに外国のベルケイドの情報について翻訳してブログを書いている人がいる。 そのブログの情報によれば緑茶がベルケイドの効果を妨げるとあった。 緑茶に含まれるポリフェノール(カテキン)とビタミンCがベルケイドの働きであるプロテアソームの働きを阻害するというのである。 一般論としてポリフェノールは血液をサラサラにする働きがあるし、ビタミンCはガンの予防などに良いと言われていて、共に健康に良いと言われているものである。 緑茶の他にもポリフェノールやビタミンCの多く含まれている食品は多いが、緑茶以外の食品ついては別段良くないと書かれていない。 緑茶に関しては、先日外泊した時にたまたま家で飲んだのだが、それが美味しく感じてそれまで飲んでいたほうじ茶を止めて、こちらに切り替えようと生協に頼んだのだが、その書き込みを見て買ったが飲まないでいる。 その他のブドウや柿やさつま芋、チョコレートなどが最近わりと美味しく感じて食べたいと思うのだ、と言うことはそれらを身体が欲していると考えられる。 今のオフに良くないものを欲しているということになるので、それはおかしいではないか・・・となるのだが・・・愚考するに、それらは骨髄抑制を何とか正常に戻そうと身体が欲しているのだと考えられる。 現在オフは幹細胞自家移植をを受けて普通の人より3割ほど血液成分が低い状態でいる。 今オフは骨髄の働きが活発化すると、またぞろ形質細胞の生産が活発化して癌化したグロブリンを大量生産するリスクが出てくることが考えられる。 世の中の一般論として、健康に良い食品というものがあり、それらを手軽に補うための数々のサプリメントなどが発売されている。 たしかにそれは一般的には良いことだろうが、身体というのはバランスの上に成り立っているのだから、良いものを補給するのは良いと言うのはあくまで表面のことであり、時には抑制することも大切という裏面もあるのだと言うことを忘れてはならないのではないか。

 今日もまた数年前に書いたオフの日記からの引用する。

 モブ・ノリオ著の『介護入門』を読む。 今年前半の芥川賞作品である。 今年春、この作品で文学界新人賞を取った後、同作品ですぐ続いて芥川賞を受賞している。
 デビューした第一作で名のある芥川賞を取る作家は少ない、最近では平野啓一郎ぐらいかな? 早い人で第一作で何かの雑誌の新人賞を取って、第二作で芥川賞を受賞するようだ。 まあ、それだけこの作品がのもつインパクトが素晴らしいということであろう。 たかだか100ページぐらいの作品だが読んでいてグイグイと圧倒するパワーを持っている。 最近の芥川賞の男性の受賞者の中では比較的一般受けするというか、読ませる力を持っている長嶋有吉田修一などはそのスケールの点でやや小振りなことが、作品を追う毎に見えてきているが、その後に続く吉村萬壱モブ・ノリオはまだ作品数が少ないこともあるが、まだ底が見えないスケールの大きさを感じさせてくれている。
 さて、この介護入門という作品だが、玄関で転んで脳が陥没したおばあちゃんを意識不明の状態から蘇生させ、その後も夜は添い寝して介護を続けている孫の独白小説ある。 一方、彼は齢三十にして頭を金髪にしてヒップホップ狂いで定職もなく、大麻常習者のハナツマミの困り者なのであるが・・・その一部を引用しておく・・・

 ≪電動ベッドの上で下肢が固まったまま、おそらくは余生の大半を送るはずの祖母は、一日何回ぐらい死にたいと心から願うのだろうか? 日によっては、陽光が明るく差し込む朝から正午あたりまで、祖母はさめざめと泣き続ける。 が、俺はそれを最悪だと思ったことはないぜ。 最悪は稀にそれを目撃したからと一緒に連れ泣き、はたまたその時間偶然その場に居合わせなかった俺に対しあたかも己だけが知ったことのように得意げに語る下司野郎、つまりは俺の叔母のような存在だ。 実の親が介護ベッドで横たわる部屋の隣室で、「人間もこないになったら終わりやなあ、私やったら死んだ方がましやわ」と番茶を啜りながら嘆息していた奴が、祖母の枕元で、「お母ちゃん、辛いなあ」と無知特有の自己満悦にも等しい涙を流すのだよ、一度もムツキを替えようともしたことがない己を省みることもなくね。 朋輩(ニガ−)。 陳腐な悲劇ってのは月並で特権的な語り手を作るんだってな。 俺もそのお仲間か、だと? ha、ha、どっちでもいいさ、好きに決めてくれよ。 但し、この俺なくしては、ばあちゃんは介護さえ受けられなかった身体だったってこと、YO、こいつに関しては尊大に語らしてもらうぜ、俺はこの件の権威なんだ。≫

 ≪昼下がりなど、祖母の様子を見に下りてゆく、すると、おばあちゃんにテレビを見てもらっていますと称して、手の空いた介護士が介護ベットを背にして低俗なワイドショーに見入っていたりする。…(中略)…俺のばあちゃんはヤンキー上がりのブス漫才師が出てる糞番組なんか見てないぜ。 不倫だと?真実の恋に目覚める中年女たちだと? 何故に低所得者層の抑圧された主婦向けに作られた風テン電波で祖母の脳を汚染するのだ? ばあちゃんがこれでガンコな汚れも落ちるのねと香りの粒入り洗剤を買ったり、今月はちょっぴりピンチだからとサラ金からカジュアルに十万円借りたりするか、fuck!祖母は捕まえる間もなく脳を通り過ぎてゆく映像と音の垂れ流しに五感を奪われているに違いないのだ。 こんな時「すいませんが、その頭のおかしくなる番組、つまり頭のおかしいことに気付いていない人たちが喜んで観たがる番組を消してもらえますか?」と口に出す訳にもいかねえだろう?≫
 などなど、毒舌に継ぐ毒舌から見えてくるものは、今の時代の幸せ物語の<嘘臭さ>の正体である。 (offer57の日記 2004-12-25) 

 その後期待に反して、モブ・ノリオはまとまった作品を書いていないようである。

 現在オフの嫁さんはマンションの下の階に住んでいる父親の介護をしている(糖尿病、認知症乳がん再発などを罹患していた母親は今年の8月末亡くなった。 その少し前の7月兄であるアッチャンは三年間ほどの自宅生活の後、再び双極性障害の病状が思わしくなく再入院) そんなわけで現在93歳の父親は一人暮らしである。 数年前の脳梗塞で小便の袋バルーンを腰に下げいるし、心臓はペースメーカーを入れて動いている。 介護度2であって週二日訪問看護婦がバルーンの洗浄に通って来ている。 (その他の日は看護師の資格のある嫁さんが洗浄している) また月一イチほどの回数で近くの病院のそれぞれ循環器科泌尿器科、脳外科へ受診している。 何とか最低限の日常的動作はしているのだが、何と言うか・・・元医師なのだがとにかく死にたくない人で、大小便の回数や量、血圧、脈拍などの数値に神経症的にこだわっている。 ガンが進行しているオフが死に関してはあまり怖いとは思わないと聞いてうらやましいと言っている。 以前はよく般若心経などを写経していたと言うが、そこに書かれている内容に関してはあまり興味はなくて、写経そのものが心が落ち着くという理由で続けていたと言う。 日常的には一日の大半をテレビを見て過ごしているが、プロ野球の巨人ファンでほぼその試合を見ているし、その他では大相撲、将棋、碁などの番組を主に見ている。 人との会話などは得意ではなくて、若い頃から自分の思うようにいかないと癇癪をを起こすタイプで、また身の回りのことから世間一般のことでも変化することが好まない秩序重視タイプの人である。 嫁さんは父とは子供の頃から性格的にまったく合わないままここまで来たと笑っている。