終末期医療

  秋が静かに深まってきている。 ここのマンションは山の麓に建っているのでまわりに木々が多い。 この地は元々羽振りよい頃の日本郵船の社長の別荘地で、起伏のある広い敷地内に曲がった道路が走り、その両脇に四つの棟が建てられている。 
そのマンション内の桜の木が今が紅葉の盛りで、それに続いて西洋のフウの木が黄色や赤色に色付きはじめている。 日本のカエデはまだまだ緑でその後に来るだろう。 久しぶりに静かな週末を過ごしている。 今夜は風邪で三日ほど寝込んでいた娘の慰労会で、夕食に招待してオフが料理をし嫁さんと三人で卓を囲む。 この寒さなら鍋料理がよいのだろうが今夜は天麩羅を予定している。
 信じられないほどの異常な食欲に困っている。 たぶんステロイドのせいだろうと思うのだが・・・もう食べても食べても、まだ食べたい、食べたい。
 それも甘いもの・・・カステラとか、ドラ焼きとか、餅や饅頭類などお菓子類が食べたい、食べたい、食べたい。 おかげで再びお腹がせり出してきた。 昨日即位20周年を迎えた天皇の顔を久しぶりに見たが、まさにムーンフェイスであった。 何らかの抗がん剤をしているのだろうと思う。 オフもそうなるのは時間の問題のような気がする。 夜眠れない日が続いていたが、寝不足が続くと最後は眠れるもので、ここ二、三日はよく眠れている。 お酒類を飲むのは完全に止めたし、アモバンなどの睡眠導入剤などはもう飲んでいない。 末梢神経はまだ障害というほどではないが、慢性的に手足が鈍く痺れているし、全体的に身体のダルさは続いている。 料理などの軽作業を連続して続けれるのはせいぜい小一時間ほどが限度で、その後しばらくベッドやソファーで休憩が必要である。 本を読む集中力はないというか、読書中頭がぼんやりしてきてしまうので、好きな読書はここのところしていない。 タンデムを受けて年齢が十歳老けたと思うが、このままベルケイドを続けていくとさらに十歳老けてしまうような気がする。 ただし外目で見る限り黒い毛もフサフサしてきているし、五十歳代に若返っているように見えるから皮肉なものである。 

 2008-04-02 長寿=ハッピーか? と書いたオフ59の日記より転載する。

 後期高齢者医療制度では75歳以上の人全員を従来の医療保険から切り離し、後期高齢者医療保険に加入させる。  75歳以上の人が病院の窓口で支払う自己負担分は原則1割で、これは今までと変わらないが、年金の受領額が年18万円以上ある人は、今月15日支給の年金から保険料が天引きさることになる。 終末期医療費は老人の医療費の20%を占めるという。 また、国民一人が一生使う医療費のほぼ半分が、死の直前の2ヶ月に使われるともいわれる。 厚労省の本音は、膨れ続ける高齢者の医療費を抑制することにあって、医療費を使い過ぎたら保険料アップの形で自分達にはね返るしくみで、イヤならむやみに医者に行くな、ということなるのだろう。 調べて見ると、75歳以上の人は全国に約1300万人いて、医療費が年10・8兆円になっている。 また、この医療費のうち保険料で賄えるのはたった1割に過ぎず、5割は税金、4割は現役世代の支援金が充てられている。 9兆円も国民が負担していることになるが、これはかなり問題が多い。
  以下はオフが時々ウオッチしているアクさんという人のブログからの抜粋、要約であるが・・・
 先進国の中でぬきんでた高齢化社会となっている日本では、高齢者が世界一、二の長寿を楽しんでいる。 あらゆる場に元気な高齢者が溢れている。 そして健康に長生きすることは良いことだということが今の世間の常識であって、それに疑問を挟む人は人はあまりいない。
 だが、今、長生きはよくない、苦しい、悲惨だ。長生きを望まず、死に時をわきまえろ!、とあえて主張している人がいる。 在宅老人医療を専門にする久坂部という医者である。
 彼はその著書の中で、介護施設でのデイケア時に相談を受けるが、そこで出会う患者の大部分は、長生きを喜ぶよりも、苦痛に感じ、何とか早く死にたいと口にしていると言う。 健康な長寿を礼賛するだけで、長寿に伴う苦痛に目を背けるのは間違っていないかと、実際立ち会った数々の例をあげて警鐘を鳴らしている。
  久坂部医師の言いたいことは以下の4項目にまとめることができる。
1)一般に長寿は良いこと、とされているが、必ずしもそうではない。長生きの最後は、苦しいものだ。悲惨ともいえる。長生きを美徳とする常識を変えるべきだ。昔のように、自然な死を迎えるほうがいい。
2)病気の治療と延命を何より大事とする医療のあり方は考え直したほうがいい。治療することでかえって死に至るまでの苦しみが増してしまうケースが多い。安らかな死を迎えることを手助けする医療へ、老人医療のあり方を切り替えるべきだ。
3)医療に延命を求めるより、死に時をわきまえ、それまでの充実した生を目指したほうがいい。
4)治療を受ける側と医療関係者がこのように考え方を変えることにより、医療・介護などの問題は、よほど良い方向に変えられるのではないか。

 できるだけ遠ざけたい話題だろうが、元気な高齢者ばかり見ていると見損なってしまっている陰の部分があることを忘れてはならない。

 なお、アクさんのブログは以下で読める。 久坂医師の主張を良くまとめてあってこの問題の本質がかなり鮮明になっているし、最後のコメント欄も考えさせられる。
 http://aquarian.cocolog-nifty.com/masaqua/2008/03/post_cf17.html#more