コウバコカニ

 昨日外来で受診に行ってきた。 採血の結果、血小板値がまた一段と下がっていた。 ここ十日間で、9・3→7・0→5・8→2・6(標準14〜44)と下降一方なので医師が言うには、これ以上下がると成分輸血になりますねぇ・・・結局明日再び受診、採血検査となった。 ベルケイドによる骨髄抑制が効き過ぎている、というか副作用が強く出ているということになるのだろう。 血小板が低下すると出血時に血が止まらなくなるというリスクが高まる。 
 受診の後、例によって魚の棚商店街で買い物をする。 魚では、スズキ、ガシラ、鰯、蛸などの他にシャコとコウバコカニズワイガニのメス)を買う。 先日漁が解禁になった初物である。 解禁当日には一匹三千円ほどの祝儀値だったと言うが、買ったのは少々小ぶりだが4匹千円でお買い得だった。 さっそく帰って茹でて嫁さんと二人で食べたが、一年ぶりに食うカニの味はシアワセそのものだlった。 今日は残りの魚をさばいた。スズキやガシラは塩焼きや煮付けに出来るように、蛸は塩揉みして内臓を取る、それらの下拵えに小一時間あまり、今のオフの体調ではこれくらいの作業で疲れがピークとなる。  また八百屋にはアワビ茸があった。 数年前横浜の中華街で子供達と食事会をした時に、使われていた食材である。 その時初めて食したコリコリとしたその食感が忘れられなかったので、これはまだ食べていないが天麩羅にして食べるつもりでいるが、これまたシアワセ!を味わえることになるだろう。 

 今日もまたゆらゆらと死について・・・

 先日書いた時の事柄にすこし関連しているのだが、補足しておくと・・・
 本能が壊れてしまっている人はまた、自身の死を共同的な幻想にアナロジーするようにして死ぬことが往々にしてある。
 いわゆる何かの大義名分に死ぬと言うことである。 詳しくは書かないが、それは、宗教的な殉教であったり、国家へに殉死だったり、革命やテロのための犠牲的死であったり、愛のための死とか、心中であったり、家族のための犠牲的な死とか云々であるが・・・自身の死と共同的な幻想との一致させることで、信じる幻想の永遠性へと自身を結びつけることで自身の死に完全性、永遠性を付与すること・・・まあ、本能の壊れた人は、このような一見摩訶不思議な死に方を選んで死んでいくことがままあるということである。

 オフの現実の場での人の死に立ち会った思い出・・・肉親の死を何度か体験しているが、すべて病院で管理された中での死であったので、死の実感と言うべきものが極めて薄い。
 オフにとってもっとも身近な人間の死は、肉親ではないまったくの赤の他人だったのだが、ベトナム旅行中一人の行き倒れの人が死ぬまさにその現場に立ち会ったことである。

 真っ昼間、ベトナムホーチミン市の公園を一人でぶらぶら歩いていた。 すると十数人ほどの人だかりが出来ていて、何だろう?と思いそちらへ足を向けた。 人々が輪になって立っている真ん中に一人の男が倒れていた。 その人の顔を見た途端にそれをいわゆる土気色というのだろうが、ああ、この人はもうじき死ぬなぁ、と思った。
 その人は一人でしきりと何か言っているのだが、人々はそれを聞くという雰囲気ではなく、その人と一定程度離れて輪を描いてを取り巻いて、こちらもてんでんに何か言いあっていた。 
 だが、何となくというか自然にその人のそばにしゃがんで、その人の手を取ろうと思い、そうした。 その人は手を取ったオフに向かって何かしゃべりかけてくる。 もちろんだがオフにはベトナム語はわからない。 分からないながらもオフはその人の視線を受けてただただうなづいていたが、何となく、自分は何処そこの誰々であってうんぬん・・・と言っているのではないか、と受け取っていた。 この人が何か感染症の病気だったら困るなぁ、という思いも少しあったが、もう手を握ってしまっている。 ところがしばらくして、ポツリ、ポツリと雨が落ちてきたと思うと、もうものすごい雨が降ってきた。 いわゆる熱帯のスコールである。 季節は5月末か6月に初めだったので、ベトナムではすでに雨季の入り口である。 アッという間にパンツまでびしょ濡れ状態である。 十数人いた人々はすでに駆け足でその場から逃げ出している。 オフ一人がビショ濡れになりながらその人の手を取ってその場に残っていたが、正直少し心細くなってきた。 その時にはその人は目を閉じてしまっていたが、まだ生きていたと思う。 だが、手をほどいてもその人はピクリともしなかった。 これで行くよ、と日本語で静かに言い置いてオフも立ち上がってその場を去ったのだが・・・
 その後、オフはその時のことを、と言うか人の死について考えるたびに、その時のことをこれまで何度も何度も思い出しているのだが、それはオフにとって実感として感じた<人の死>だからだったと思う。 (offer59の日記・2007-05-23)