病院へ帰る。

 外泊三日目の日曜日、東京から見舞いに来ていた上の息子夫婦も食事をした後帰京した。
 夕方、嫁さんと二人で手分けして用意したお魚メイタカレイ(小ぶりの鰈だが身が厚く煮付けが美味しい)の煮付けと、鱧(ハモは身が白身でやわらかくて、脂っこくもなく淡泊でもなく、トラフグとともにまさに関西人好みの絶妙な味だなぁ・・・)の天婦羅を食べた後、病院まで送ってもらい両側に柵のついた病院のベッドで眠る。
 月曜日は朝採血、採尿の後、抗がん剤ベルケイドの点滴今回もその前後にデカドロン(ステロイド)40錠飲む。
 この後火曜日、水曜日はただただ病院のベッドで寝ているしかなく、木曜日に再び点滴を受け、順調であればその日か翌日の採血の結果を見て退院となるのだろう。 その後は週二度の抗がん剤の点滴のため外来の通院で治療を続けることになる。 デカドロンのせいか昨夜もあまり眠れなかったし、今日日中もあまり眠くない。
 このようにしてこの先抗がん剤治療を続けるのだが、残念ながらこの病気が治るとか回復するという望みはまずないので、副作用の亢進の様子を見ながら抗がん剤を続け少しでも長く病状を抑えていく治療ということになる。 効果が出なかったり、副作用が強く出て薬が続けられなくなれば前のように麻薬系の薬を使って痛みや苦しみを抑える本格的な緩和治療ということになるだろう。
 ところがベルケイドの外にもう一つだけ薬が現在あるのだ。 昨年末に認可されたサリドマイドという薬である。 オフたちがまだ若かった頃、当時睡眠薬として使われていたサリドマイドを妊産婦さんたちが飲んで、両腕や両足のない子供が次々に生まれてきたという事件があって社会的に大問題になったことがあった。 当時、肩の根元から両腕がなくて代わりにアザラシの短いヒレみたいなものが生えている写真をTVなどで見たことが何度かあったが、その映像はかなり衝撃的だった。 その後すぐにサリドマイドの認可は取り消され、この事件は過去のものになったが、多分まだまだ当時生まれた数百名ほどのサリドマイド児たちは現在も日本の各地にひっそりと生きているだろうと思われる。 数年前から過去のモノとなっていた薬サリドマイドが数年前から外国で抗がん剤としてハンセン氏病や多発性骨髄腫の治療に使われ一定の効果を上げている、という情報が伝わって来ていた。 日本でも医師を通じ個人的に取り寄せて使用しているという噂もポチポチ聞こえていた。 そのサリドマイドが昨年日本でもある一定の枠を設けて抗がん剤としての使用が認めれるようになった。 しかし、この薬もベルケイドと同じで完治を望むのはまず無理で、病状の進行を抑え少しでも延命をはかるというのが実情のようである。 おそらくその治療が効いたとしてもベルケイドと大差ない程度の効果延命だろうと思っている。 
 ところが情報ではまだ研究中で臨床もまだまだという。 砒素三酸化物というものがあるらしい。 頭に砒素などと名がついたこれまた恐ろしい薬である。 抗がん剤というのは出発が毒ガスを使ってガンを退治しょうという考えから来たから当然かも知れないが、それにしても恐ろしい薬剤のオンパレードだ・・・。