禍々しい

 今月の初め何となく歯茎が浮いたような感じがしていたが、歯磨きをしている時に歯ブラシで傷をつけてしまった。 その後歯茎がだんだん腫れてきて、とうとう痛み出して腫れているのが顔にも表れてきた。 先週初めがんセンターの口腔外科に予約を入れて受診した。 歯肉炎ということで抗生剤が処方された。 一日一度三日間飲むだけで効用は一週間継続するという抗生剤である。 知らないうちにどんどん新しい薬が開発されると感心する。 ところが三日間飲んだ夜、すごく寝汗をかいてパジャマを何度か替えた。  翌日昼飯時になったが、何となく胃のあたりが少し不快で重いし食欲がない。 食事後に飲む薬のこともあるので、小さい林檎の皮を剥いて食べて、それで昼飯代わりにした。 夕方頃から少し寒くなって来たなぁと思っていると、おでこや頬っぺたが熱い。 体温を測ると38度を超えている。
 下の階から上がってきた嫁さんが、ベットに横になっているオフを見て、どうしたの?と訊いてくる。 悪霊が降りてきて取り付いたよ、と笑って答える。 馬鹿をやっているからよ、と言われたが、返事のしようがない。 血液内科から出ているレスキュウ用の解熱剤を飲んで下げる。 どうやら抗生剤の副作用かもしれない。 ソレから連日寝汗はかく、38度を超えることはないが37度台の微熱が続いている。
  白いモヤモヤした霊気みたいものが、流れてきて身体を取り巻いたと思うと、それが身体の回りでクルクルと縛るように踊りまわり、時にはそれが一瞬貧相な人の顔のように見えたり、蛇や、何か分からないが邪悪なものに見えている。 身体を、とくに腕で顔を防ごうと、あるいは守るようにそれを振り切り逃れようとするのだが、その霊気みたいものは執拗に、あるいは縛り上げるようになおも身体を取り巻いてくる。 もう駄目だ、と思った時それは一瞬にして消えた。 しかし、消えたのか何処かから身体に入り込んだのか分からないが、とにかく執拗に取り巻いていたソレは目の前から消えた。