モズが鳴く

 朝方モズの鳴き声で目が醒めた。 少し前までうるさいほどの蝉の鳴き声がしていたことが嘘のようである。
 昨日、買物に出るという嫁さんと連れ立って散歩に出掛ける。 嫁さんが銀行へ寄っている間に一人で須磨の海岸へ出た。 駅裏の砂浜ではちょうど海の家を解体して取り壊しているところだった。 太平洋上を台風が北上していたので、その余波の風が時々強く吹いていたが、北よりの風で海は波はなく穏やかである。 すぐ側の波打ち際では真っ黒に日焼けした若い女が二人、大きなカヌーを近くのコンテナまで運んでいた。 階段状になっている段の上に腰掛けてそれらの作業を見たり、遠くの海を見たりしていた。 海岸にはまだ数組の海水浴客がまばらに砂浜に寝そべったりしているが、シーズン外れたけだるい淋しさが漂っていた。
 母親が亡くなって10日あまり経ったが、嫁さんはまだまだ溜息をつくことが多い。 ちょっとしたことが過去の思い出を誘いウルウルしていることが多い。 この二人は50年間ズットほぼ同じ屋根の下に暮らしてきていたわけで、絆が深かった。