葬儀

 一昨日嫁さんの母親が亡くなった。 昨日の朝6時半みまかったのだが、もうその日の夕方にお通夜、翌日午前に葬式。 とにかく慌ただしかった。 後ろから追い立てられているうちにすべてが気が付くと終わってしまっていた。 終わってみると、こんなスピーディなのも悪くないなぁ、と思う。 昨年乳がんが見つかり、手術、転移、再発、抗がん剤治療と・・・87歳という年ではなかなか無理だともいえる治療に耐えて来ていたのだが、一年弱あまりで終末を迎えることになった。 もっとも十数年前から、糖尿病による足の血管の閉塞が見つかり、一時は壊死が始まり、切断か・・・というまでになっていたが、血液の粘りを止める薬の多量の点滴で快復していた。 だが同じ頃脳の血管の閉塞も起していて徐々に認知症、いわゆるボケ症状が始まっていた。 まだらボケ状態だったが日常的なコトは何も出来なくなり、少しマトモな時は、こんな糞ババァは早く死んだほうがいいのよ、とか、死にたいわ、と洩らしていた。 そんな朦朧としたボケ状態にありながら時々鋭い指摘、と言うか先取りするような予言めいたことを言い出していた。 一番印象的だったのは、初めてオフが嫁さんの家を訪ねて嫁さんと両親と四人で食事をした時、食べ物に手を付けるのも忘れたように横からオフの顔ばかりジッと見ていていた。 そしてその翌日から知った人から電話が掛かかってくる度に、娘は結婚しましたの、と答えていた言う。 そんなコトもありオフは彼女のことを<巫女さん>と呼んだりしていた。
 嫁さんは子供の頃から一つ上の兄アッチャンのことを悩み苦しんできたこの母親を身近に見ながら育ってきた。 どちらかといえば自分のことにしか関心のない父親とは距離を置いてきたが、母親とは一卵性双生児のような仲の良い母娘関係だった。 母親が軽い脳梗塞で入院した先月半ばから、夜は病院でズット母親の側で泊り込みで付き添ってきた。何時まで続くか分からないそのようなハードな生活では身体が参ってくるよ、と言うのだが 家にいては落ち着いて寝ていられない、という理由で毎日回数券を買い朝帰りをして夕方には電車で病院へ通っていた。
 そのわりにはその相手がみまかった今意外とサバサバしているようだ。 今月初め、一時帰宅をしていた母親が、一瞬マトモに戻った時に側にいた娘に向って、死にたい、どうか殺して頂戴、とつぶやいたと言う。