ウイルス療法

 甲子園での高校野球が終わる頃、いつの間にか季節は秋の気配になっている。
 オフにとってその印象がもっとも強かったのは、西東京代表の桜美林高校が甲子園で優勝した年である。 この年はお隣の石川の星陵高校が準決勝まで進んだが大阪のPL高校に敗れた。 そのPLと初出場の西東京桜美林と決勝で対決した年である。 今検索して、それは1976年だったことを知る。 と言うことは33年前、オフが29歳・・・やりたいことを断念して田舎へ戻り、何時倒産してもおかしくない商売を受け継いで間もない頃である。 そんな日々の鬱憤を晴らしにたまの休みには能登半島へ一人で海釣りに出かけていた。 カーラジオから桜美林が優勝したし瞬間の興奮が流れていたのだが、まさにその瞬間に道路は峠道の切通しの頂点に差し掛かった。  目の前にはくっきりとした空、秋の爽やかな空が、大きく大きくどこまでもどこまでも広がっていた。
 
 先日日本でも近々東大病院でウイルス治療が始まるというニュースがあった。
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090810-OYT1T01085.htm

 ウイルス治療というのは、簡単言えば、ウイルスをがん細胞に感染させる治療法である。 あらかじめウイルスの遺伝子を組み替えて改変しておき、そのウイルスをがん細胞に感染させて、がん細胞を破壊させようとする治療法である。 マウスの実験ではある程度の成功を見ているというが、これから人体で臨床されることになる。 放射線抗がん剤などにもいえることだが、そのもの自体は人体にきわめて有害なものであるようにウイルスもまた同様である。 そのような有害で危険なものを使うことで生きたがん細胞を破壊しようという訳である。 上手く行けば放射線抗がん剤よりも副作用も少なくて済みそうであるが、ウイルスが突然変異して暴走して手が付けられなくなる可能性は残る。 いずれにしろ毒を持って毒を制する、という事に変わりはない。 上手く行けば手術、放射線抗がん剤に続く第四の治療法となる可能性はある。
 オフが受けた抗がん剤治療。 とくに血液系の移植にともなう抗がん剤治療の場合は、人間の致死量を越える毒を血液の中に入れるのである。 その毒は血液から身体の各細胞内へ移り現在もそこに留まっている。 まだまだ、味覚障害とかいろいろな身体の変調があるのは細胞内に残っているそれらの抗がん剤の副作用なのである。