蛍雪会 和解

 また今日も蛍雪会での話題である。
 退院して以来マンションに引きこもって、嫁さん以外人と会うこともなくひっそりとした毎日を過ごしていた。 そのせいでブログに書く話題が無くなってしまい、以前のように日記を毎日更新することがなくなっていた。 今回のように多くの人達に逢うと、良い意味で強い刺激になったのだろう、書きたい話題が次々に出て来る。
 まあ、今回の同窓会で一番良かったことは、ちょっとした行き違いで不仲になっていたと女の人と和解できたことだろう。 そのキッカケは相手の人がつくってくれた。 オフが懇親会の席に座って隣の人と話しながら飲み食いをしていた時に、彼女が挨拶をしにビール瓶を手にして横へ来て座った。 その時、お互いに目と目を合わせた。 その瞬間にわだかまりは融け、和解はすでに成立していた。  不仲になったのは、じつは前々回の蛍雪会の時であった。 「もう蛍雪会には二度と出ない」、と言って帰っていったと人伝に聞いていたのだが、その通りで前回の蛍雪会に彼女は出席していなかった。  
 ところが最近、夫の退職を機に彼女達は田舎へUターンしている、と聞いていたが、今回の会には出席していた。 多分出席を決めた時に、気持ちの中ですでに和解を決めていたのだろう。 その意味ではこだわりを捨てて傍へ来た相手の人の方がオフよりずっと偉かったし、大人だったのだと思う。 
 不仲になったことのいきさつについてはここには書かないが、オフも酒が入るとややまわりの人に対して辛辣にななる悪い癖がある。 これまで喧嘩して不仲になるということはあまりないのだが、酒が入ると相手構わずズケズケものを言出だす傾向がある。 一度など、これは相手は男だったが、同級会の流れの三次会で行った飲み屋でかなり辛辣なことを言い出して、相手を泣かせてしまったことがあると言う。 これを他人事のように書いたのは、情けないことにその時何を言ったかまったく憶えていないのである。 その時はまわりにいた友人が気を利かせてタクシーを呼んで、一緒に家まで連れて帰ってくれたという経緯がある。 その相手は男だったせいもあり、次回の会でこちらから謝ったと思うのだが、あっさり仲直りができて、良かった、良かった。
 これらの事があったのは、思えばだいたいが妻が亡くなった後の時期のことで、自分では気が付いていなかったがどこかで気持ちが荒れていたのだと思う。
 今回も相手が 「私はちょうどあの頃、うつ状態でかなりおかしかったのよ」、と言ってくれていたが、オフも違う意味でおかしかったのだろう。 「その後、安定剤の薬を飲むようになって少し落ち着いたわ」 と言うのを聞いて、「その薬はひょっとしてデパスじゃないのか?」と訊くと、「そうなのよ、ひょっとして二人はデパス仲間なの?」と話が上手く流れていった。

 今回の二次会では、銀歯の才女と呼んでいた人、じつは数年前宮沢賢治賞をもらった小林敏也氏の奥さんなんだが、彼女が越路吹雪の唄のメドレー次々に披露するのを六年振りに聴けたし、まわりの話し声が一瞬止んで静かになるほど素敵な合唱クラブの歌姫の「芭蕉布」も聴けた。 「次回はカラオケ練習してデュエットしましょうね・・・」 オイネ、ソンナガイネェ・・・と金沢弁丸出しの天然に明るい人も約束してくれたし・・・そんなことなどなどもあり、じつに思い出深い蛍雪会であった。