文学全集

 もう7月の末だというのに、今年はまだ梅雨明け宣言が出ていない。 真夏の日差しがないのはこの年になるとありがたいのだが、蒸し暑いのには閉口する。 今日も曇り空だが室内の湿度が80パーセントを越えていた。 体調は、睫や頭や身体のアトピー的な痒みも少なくなって、まあまあというところである。 ただ口の中が痺れているのが続いていて、そのせいか味覚がまだまだおかしい。 それに匂いなどの感覚もマトモとはいえない。 一時口が乾いて夜中に目が醒めると口の中がバリバリになっていたのだが、今は横を向いて寝ていると、枕に涎を流て濡らしているほどまでに快復している。 ただ最近の蒸し暑い気候のせいか少し疲れやすくなっている。 悪いことばかりではない。 一ケ月前ほどから髪の毛が生えて来ているのだが、以前は白髪もボチボチあったが今は頭や髭は真っ黒である。
 「日本近代文学の名作」という文庫本を買って、そこに載っている作品の内まだ未読のものを読んでいる。 ここには嫁さんの母親が昔買った文学全集(昭和30年代末、新潮社から出た文学全集)があって、それらを引っ張り出してきて、芥川龍之介の「玄鶴山房」、川端康成の「雪国」、中野重治の「歌のわかれ」、二葉亭四迷の「平凡」などを一日一作のペースで読んでいる。 ただし字が文庫本より小さいので、嫁さんの老眼鏡を借りて掛けないと読めない。 この後、志賀直哉の「暗夜行路」や田山花袋の「田舎教師」、坂口安吾の「白痴」などなども読んでいくことになる。
 今日読んだ二葉亭四迷という人は明治元年に生まれ、明治四十二年に亡くなっていて、まさに名実共に明治の男なのだが、その文体や人柄、考え方など意外と新しいというか現代に通じるものがある。 つまり百年前に亡くなっているのだが、現代に通じるだけの長いスパンの洞察力を持っていたということで、今生き返ったとしてもすぐさま友達になって楽しく話し合えそうな気がする。