アッチャン

 嫁さんの言うところではここのところ嫁さんの兄の調子が良くない。 兆候は一ヶ月ほど前からだっらしいが、実際にはもう少し前から出ていたのかもしれない。 本人はそのような兆候を出来るだけ隠そうとする。 当然だろうと思う。 この兄は30歳前から20年以上入院生活をしてきた。 当時の病名は躁うつ病だったが病状の変化と共にそれが精神分裂病と変わり、今では病名を改められて統合失調症と名付けられている。 それでも四年ほど前に退院となり、その後多少の波はあったが比較的順調に過ごして来ていた。 それが最近は日常生活のいろんなモノゴトに対してキチキチになってきている。 とくに時間に対してそれが出てくる。 たとえばお母さんのオムツを取り替える目安が3時間程としているのだが、その時間を計っていて3時間になるとキッチリと取替えを言い出す始末である。 モノゴトには遊びがあるということがどこか許せなくなってしまって来ている。 また調子が悪くなると顔付きが険しくなる。 どうやらそんな時は頭痛が出てきているみたいだし、幻聴もでてきているみたいである。 幻聴に関しては最初は否定していて認めなかったのだが、数日前からそれが出ていることを嫁さんにたいして打ち明けた。 ただこのことはかなりの良い兆候でもある。 なぜならそれを自分以外の誰かに話すことはその相手との信頼関係がかなり強くなくては起きないことであるからだ。 その点に関しては嫁さんは本当によくやっていると思う。 彼女がいるからその兄も退院して家へ帰れたのだし、帰った後も比較的平穏に過ごせたといえる。 同じことは母親の認知症にも言えている。 母親ももう十数年前から糖尿病から来るボケ症状が始まっているが、その進行が医者も驚くほど緩慢である。 家庭内で過ごしていることが大きいのだが、それを看る側の負担は生易しくない。