物理の先生

 昨日のニュースの中に以下のようなのがあった。
 ≪職員会議での挙手などによる採決を禁じた東京都教育委員会の通知に対し「民主主義に反する」などと反対した都立三鷹高の土肥信雄元校長(60)が4日、定年退職後に非常勤教員として採用されなかったのは不当として、都に損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。≫ 
 この元校長が不合格となったのは、かって東京都教育委員会が挙手などでの採決をしないよう通知したが、「民主主義に反する」と通知の撤回を求めたことがあったらしいのだが、どうやらその時の「意見表明への報復」だ、と主張していると言うことだ。  今春の定年・勧奨退職者の非常勤教員への応募は790人で、768人が合格とあるが、この元校長は不採用の22名に入ったことを、俺のような一生懸命に教育に取り組んだ教師を非常勤教師として何で採用しないんだ!その根拠を示せ、と言いたいのだろう・・・
 しかし、挙手による採決というのはたしかに顔の見える民主主義だろうが、日本の現実では時と場合によってあまりよい採決手段となりえないのも事実だろう・・・それよりも、停年退職した教員が非常勤として再雇用されるが95パーセント以上という数字の方に驚いてしまった・・・

 オフの同級生に田舎で高校の教員をしていた男がいる。 あまり仲の良い男ではなかったが、十年ほど前の高校の同窓会で顔を合わせた時少しだけ話したことがある。 彼はその時ある県立の高校で物理の先生をしていたのだが、その高校というのは田舎でも低レベルの学力の生徒が集まる高校である。 彼は、「嘆かわしいほど低学力でヤル気のない学校で、生徒にどうやって高校物理の授業をやれとというんだよ、真面目にやればやるだけ虚しくなるよ」 とボヤイテいた。 それに対して、「まあ、分からないでもないが・・・それがどうしてそうなったのか、考えるしかないんじゃないの」 と答えたように記憶しているが、彼は思いのほか物理の教育にかなりの思い入れがあるんだなぁ、とあらためて感心した。 たしかに現在大学進学も望めば皆入学となったらしいが、大学は学生の学力の低下に悩んでいると言う。 分数の掛け算、割り算すら理解していない学生が多数いるという。 しかし、この問題に本気で頭を突っ込むなら、日本の教育そのものの根底まで見直して考えてみる覚悟がいるだろう。
 数年前の同級会に出た時に友人の男も出席していたが、彼がその同じ高校の校長になっているという話を耳に挟んだ。 その時に、学校の管理者になったのだから、その立場で、以前のボヤキを突き崩すことを何かやっているのか、と訊いてみたかったが、いかにもよき校長風に談笑している彼を遠目に見て、止めておくことにした。