発熱

 一昨日ドヨ〜ンとしていると思っていたら、夜中に身体が熱くて目が醒めた。 嫁さんが横から体温を計れと言うので、しぶしぶ計ると何と38度である。 とりあえず病院からレスキュー用に出ている消炎解熱剤を飲んでもう一度眠る。 昨日は37度台の体温が続き一日中身体がだるい。 この時期であるから新型インフルエンザの疑いもあるのたが、おそらくそれはないだろうと思うのでソファーベッドに横になってケーブルテレビで映画を四本も観る。 カンヌ映画祭の時期であってその関連の映画が多い。
 最初に見たのは「ペレ」という三時間のヨーロッパの大河ドラマで、言ってみればヨーロッパ版おしん物語だ。
 そしてノルウェー映画の「厄介な男、空っぽな世界の生き方」。 一昔前に流行ったカフカ的で実存主義的な不条理映画である。 今時、またまたこのような不可解な映画を造る意図が分からない。 この手の話は最後は何もない何も残らないか、ループして最初に戻るかというような結末でしか結末のつけようがないのであり、この映画も案の定その通りであった。
 そしてイタリアのルキノ・ビスコンティ監督の「家族の肖像」。 パリの五月革命に後の70年代の熱気みたいものが燻ぶるの中でつくられた映画。 余生を静かに生きることだけを望んでいる老教授の住まいに、傍迷惑なおかしな家族が押しかけて来て思いがけない騒動に巻き込まれていく・・・余生の先の静かな死と傍迷惑なトラブル・・・個人としての生とわずらわしい家族ということだろうと思うのだが・・・今となってはそのテーマーが訴えるものが弱くなってしまった、今はそんな時代である。
 最後に見たのが日本の映画で今村昌平監督の「人間蒸発」 人間蒸発なんて懐かしい言葉だが、今村作品とは知らないで何となく寝る前のひと時のつもりで観はじめたのだが、ドンドン引き込まれてとうとう最後までしっかり観てしまった。 最初はノンフィクションのドキュメンタリーとも思ったが、それをこれはフィクションだと強調する最後のあたりは少々くどいような気もしたが、これが昨日観た映画の中ではピカイチであった。 この作品へのアマゾンの解説の一部を以下に載せておく。
  ≪今村昌平監督が手掛けた劇場用長編ドキュメンタリー映画。あるサラリーマンが失踪し、その許婚者が彼を捜し求めていく。 おもしろいのは本作が決して失踪ドキュメントではなく、それを追う女の変貌の記録として屹立していることである。  カメラを向けられ続けていく中、彼女が次第におかしくなっていく様子が、ひとつひとつのリアクションから濃厚に醸し出されていき、いつしか事件の真実を追うといった趣旨からどんどん外れていき、人間の複雑怪奇な内面を目の当たりにしてしまったかのような戸惑いさえ受ける。 カメラ、映像、マスコミといった要素がいかに人を変えていくか
に鋭く迫った確信犯的意欲作である。≫