未来からの提言?

 たしか連休最後の日の6日の日だったが、たまたまNHKスペシャルを観た。
 <35歳を救え あすの日本、未来からの提言>http://www.nhk.or.jp/special/onair/090506.htmlと言うのをやっていた。 
 ≪「20年後の日本」をシミュレーションしたところ、これからの日本を支える今の30代が安定した収入を得られず、家庭や子供を持てないと、税収や消費が落ち込む一方で福祉コストが嵩む超コスト負担社会になり、日本は衰退を免れない≫ と言う問題提起をしていた。
 最後の結論は ≪雇用の流動化を前提にしたセーフティーネットスキルアップ支援などの雇用対策、子育てや教育、住宅支援などを合わせた総合的な新しい社会システムの構築が不可欠で、モノにではなくて<人>に投資する具体的な対策をすぐに行えば、中間層の崩壊は食い止められ、超コスト負担社会を回避できる≫  番組の中で日本のハロー・ワークの仕事を民間に渡して、職業訓練も含めて失業者の就職がなってはじめて報酬が出来高払いされることで成果を上げているイギリスの例などが紹介されていた。 
 この手の番組を見ていつも思うのは一見もっとものようで、よく考えてみると他人事への尤もらしい意見や提言でテイよく終わってしまっている。 もっと悪し様に言えばどこかウソ臭いのだ。 火の粉がかかって来たらそれを防ぐのは自分でやるしかないので、それを他人がドウのコウのというのは所詮お節介の範囲の話でしかない。 失業して困っているのが他人であっても、友人であってもさほど変わらない、たいへんだねぇ、と言ってこちらも困った顔をしてみせる程度の話になってしまうのがオチだ。 どうであろうと少しましな所にいる自分は一応守られているからである。 一言意地の悪い突っ込みを入れさせてもらえば、公共放送たるNHKはどうなのだ? もし出来高払いのシステムで運営していくのがベターなら、ハローワーク的なやり方から出来高払いの民間企業に仕事を移すというやり方をNHKが移行する覚悟があっての話しなのか?・・・と訊きたくなる。
 製作者や観ている人も含めて時代をひっくり返して変えるぐらいの提言であれば、それはかなりの説得が生まれるのだろう・・・そうでない限りそんな番組を真面目な顔をして見ているよりも、バカバカしい泣き笑い番組を見ているほうがまだマシだと思えたりもする。

 今、養老孟司宮崎駿の対談集「虫眼とアニ眼」を読んでいる。 その中にだいたい以下のような発言があった。
 ≪昨今、経済が行き詰まり不安だ不安だと言うけれど、築地塀に守られて、真面目に勤め上げれば板敷きの部屋にお前だけ上がって良いとか、そのくらいの未来を約束されただけのことで、生活に現実感がないとか、生きている手ごたえがないとか言っていたのが、築地塀がいよいよ壊れて、夜盗は入ってくるわ、舎人は持ち逃げするわ、荘園からは年貢が届かなくなるわで、やっとまわりの世界と同じレベル・・・飢餓や天災、疫病やら夜盗などで大乱の世界と同じと言うことだが・・・そうなってくると不安も何もあったものじゃないよ。≫ 

 この番組へのもっと辛口の批判http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/c725353c680d04ae61779bd5cf2f378dを載せている元NHK職員だった池田信夫氏がいる。 彼は政党やメディアの派遣労働の規制強化の流れに対して、企業の雇用規制の自由化を求めていて、それが最終的にはワーキング・プアーなどを減らすことに通じるとする論者である。 最近のブログの中でも ≪ 正社員が絶対安全だと思っているかぎり、起業は起こらない。もう一つは、退職金・社宅などの社員を囲い込む制度に課税し、年金をポータブルにして、福祉システムを企業から中立にすることだ。企業の福利厚生を行政が補助することによって福祉のコストを抑えてきた「日本型福祉システム」は、もう維持できない。労働者を会社のくびきから解放して自立させることが、日本経済がどん底から立ち直る第一歩である。≫ とその主張はかなり過激である。 これってモデルはアメリカ型自由競争主義に通じるのだろう。 たしかにこのような良い意味でのアメリカンモデルから、シリコンバレー型のこれまでにないようなベンチャー企業が立ち上がって、世界を飲み込む企業に育つ可能性は大きい。 それが次世代の社会を作っていくモデルとなるかもしれない。 だがオフはそのようなモデルを望まない。 人がコツコツと自らの生活を作り上げる古いモデルの社会こそ、地球や人類の将来にふさわしいと考えているからであるが・・・。