玄米の炊き込みご飯

 春は貝類が美味しい季節である。 アサリを買ってきてアサリご飯を炊いた。 だが今は玄米食なので正確にはアサリ玄米ご飯である。 玄米は米粒のまわりに米糠の膜がしっかりと取り巻いているので、お米にカヤクの味がなかなか滲みこまない。 それに塩味なども滲みこみが悪いせいだろうか、気持ち多めにする必要があるような気がする。 最近でも季節モノのインゲンやソラマメを入れた玄米ご飯を炊いたがどちらもイマイチの味だった。 両親や兄のために下の階では嫁さんが同じメニューで白米の炊き込みご飯をしているが、こちらはまあまあ美味しく炊けているという。

 数年前八尾の山荘の仕事が終わった頃、ボランティアで二年ほど主として発達障害の子供たち一緒に、カフェでランチを造っていたことがある。 子供たちと言ってもだいたいが中学生年代で、普段学校を不登校になっている子供たちである。 月イチの企画で、その日のお客はだいたいが子供たちの関係者、支援者や親などが主で気が張らない、どちらかと言えば気楽な企画だった。 関係者がお金を払ってランチを食べに来てくれて、そのアガリから材料費を引いて、残りを子供たちにその日の労働の対価として払われる仕組みである。 結局は身内でのお金のやり取りと言うことになるのだが、親や関係者が直接小遣いをやるのとは違って、子供たちのお金の受け取り方が違っている。 とにかくお金を受け取る時の目の色が違っていると言う。 子供たちはそのお金でゲームセンターへ行ったり好きなCDを買ったりするのを、何日も前から楽しみにしているのだそうだ。 子供たちの数はその日によって違うがだいたい十数人で、ボランティアで手伝いする大人はオフも含めて4,5人でその日のメニューを手分けして担当する。 ある日のメニューの一つが玄米の五目御飯で、その日それをオフが担当した。 子供たちの内の3、4人と一緒にご飯を砥ぎ、カヤクを小口に切ったりして五目御飯を炊いた。 だが出来上がったものを試食してみたら・・・これが間が抜けたような味で、とにかく美味しくないのだ。 味は薄く、水を多めにしたのでやや柔らかいのだが、カヤクの旨味がご飯に滲み出していない。 これをランチとして提供してお金を取るのはさすがに気が引ける。 そこで急遽子供たちと玄米の五目御飯をオニギリに握って、表面に薄く味噌を塗って、網の上で軽く焼いて焼味噌オニギリにした。 出来上がりは時間ギリギリになったが、味噌を付けた分味の薄さは何とかなったが、けっして美味しいなぁとまではいかなかった。 なんと言うか、身が縮む思いをしながら調理場の奥で小さくなっていたことを覚えている。