オリジナリティ

 朝ネットを開くとロック歌手の忌野清志郎が亡くなったというニュースが流れていた。
 オフが意識的に音楽から離れた頃に彼の「スローバラード」がよく流れていたが、勝手に<泣き節ロック>とやや揶揄的に名付けていた。 そのようなことだったからとくに好きな歌手ではなかったが、矢沢栄吉の巻き舌で歌うロックよりはどちらかと言えば素直に訊けた。 今日は午前中ズットYouTubeで彼のライブの映像と歌を訊いていた。 中にド派手なショッキングピンク色のスーツを着て、舞台上を所狭しと踊りながら「雨上がりの夜空に」を歌っている映像がある。 喉頭ガンを克服して武道館での清志郎がカムバックした時の映像http://www.youtube.com/watch?v=xl87agHPz7Mである。 再びファンの前で歌えたことを心から喜んでいる姿は見ていてもほほ笑ましいものがある。 井上揚水、細野晴臣らとのコラボではサングラスの揚水の顔がキム・ジョンイルにどこか似ていてhttp://www.youtube.com/watch?v=zXENptQ9yys&feature=related笑ってしまったし、その揚水との別のコラボでの「帰れない二人」http://www.youtube.com/watch?v=UsLLSQIIAkc清志郎が揚水の高いキーに合わせて出だしを歌ったが、この高い声がなかなか悪くなかった。 「スローバラード」はいろんなライブでのものを聴いたが、やはり例のピンクのスーツ姿の武道館での復活ライブで歌ったモノhttp://www.youtube.com/watch?v=qVbv0gEO70s&feature=relatedが一番良かったような気がした。 そしてオフの一番大好きな唄、ジョン・レノンの「イマジン」も清志郎バージョンhttp://www.youtube.com/watch?v=yEAL76iddxYで訊くと、彼の真面目さがジンジンと伝わってくる。

 たまたまであるがオフは一人のフリーターをしている青年、青年と言っても彼ももう30を越えたころだと思うが、を知っている。 昔は仲間とバンドを組んで音楽家としてデビューを夢みていたみたいだが、今はそれは諦めて漫画を描いていると言う。 詳しくは知らないのだが、何人かの仲間と一緒に漫画の同人誌を編集して作り、秋葉原あたりの漫画フェアーで販売しているということだ。 そんなものにどれだけ買い手がいるのか知らないが、そこからの収入では到底食べていけないだろうことだけはオフでも分かる。 そこで彼は郵便局で週何日か夜の勤務をしてそれで日々の暮らしの稼ぎとしているらしい。 音楽時代も含めて彼はそんな暮らしをかれこれ10年近くやっているらしい。 しかし、家賃が高い東京でそのようなことで暮らしを続けることは至難なことだろうと思う。 いや、それ以上にそのような暮らしを続ける自分の人生に対して、迷いや不安、老いなどの葛藤という問題のほうがはるかに大きいだろうと思える。 それがオフの青春時代と重なって見えてくる。 オフの場合は、逮捕、留置、起訴、拘留と言ってみれば自身で社会での上昇志向の道を閉ざしたようなものだが、娑婆へ出てからは仲間もなく一人ポッチだった。 日の当たる道を拒否してみたが、自分一人の才能で生きていくことへの自信のなさ、毎日が不安との葛藤の連続だった。 それなのにオフはおかしな環境で育っただけに、それだからこそかもしれないが、結婚してごく普通の家庭を持ち子供を育てるということに対して強い憧れがあった。
  話を若者へ戻そう。 彼には長年付き合っている彼女がいるという。 しかし、結婚は両者とも考えていないと言う。 それはそうだろうなぁ・・・古いと言われるかもしれないが、男に女を食わせていくだけの甲斐性がなければ結婚はしないほうがベターだとオフは思う。 問題は・・・それをそれで良しと男も女も納得できるかどうかだろう。  男は何時かは自分にも芽が出る日が来るものと思いをまだ持って頑張っているという。 残念ながらオフはその男の作品なるものをまだ一度も読んだこともないので、なんとも評しようがないのだが・・・

 最後の最後まで自分を信じれるじか、信じれないか・・・自分のオリジナリティへ確信が持てるか持てないかに掛かっているだろうと思う。 今までにはない、何処かからの、誰かからのパクりではない、まったく新しい発見が物語の中やカンバスの中や演奏の中に見出した時、我々は心の底から深い感動に包まれる。 その時こそそれまで何となくモヤモヤとしていたことが言葉や色や形や音で定着されていて、世界を語る新しい物語を見出し、自分中に新しい視野や未来が広がるようなオリジナルなクオリアを人々が見出す感動の瞬間なのだ。 最後まで頑張れるかどうかは、そのような自分の中に掴んでいる独自のオリジナリティを信じれるか、信じれないか・・・だろう。