隙あり一本!

 昨日は大変な一日になってしまった。
 順を追って話していくと、話は昨年に遡ることになる。 嫁さんのお母さんが昨年の秋乳がんが見つかって急遽10月に摘出手術を受けた。 その後数週間で退院出来たのだが、先月ガンが再発している、しかもかなり大きくなっているのが見つかった。 嫁さんの母親は高齢なのでこれは再発というより先の手術で取り残しがあって、そのガンが再び増殖して来たのだろうと思われる。 そこでオフが退院するのと前後する頃、再手術という話しになっていたのだが、医者同士のカンファレンスで循環器の医師から待ったが掛かりCTなどを撮って詳しく検査しなおすと、肺にも二ヶ所ガンの小さな転移が認められ胸部の手術は急遽中止となった。
 そしてそれから一週間後の昨日、がんセンターへ受診に行く予定日になっていた。 朝から雨が降りそうなうっとうしい日で、ここのところ少しウツ気味の嫁さんは行きたくないなぁを繰り返していた。 でも午後からの受診時間が近づいてくると重い腰を上げて母親を乗せて出かけていった。 しばらくしてオフの携帯へ電話が掛かったが、嫁さんの携帯からであった。 事故にまきこまれてしまったしまったのよ、と言う。 驚いたが、本人がこうして電話してきているのだから大したことがないだろうと思いながら話を訊いた。 ガードレールにぶつかって前が壊れているとか、さいわいお母さんも私も大丈夫だとか、向こうでトラックが横転しているとか、お母さんは頭にタンコブを作っている・・・などなど少し興奮気味に次々に話すのだがとりとめもない。 それらの話を総合するとどうやら第二神明道路の大蔵谷出口付近で事故に巻き込まれ、車は走行車線の左ガードレールに当たり左前部が壊れたもようである。 念のための検査に向かうために救急車の到着を待っている状態なのだろうと推測した。
 後で話を訊いたが以下のようなことだったみたいだ。 嫁さんが走行車線を走りながらそろそろ出口も近いなぁと思っていると、急に追い越し車線を後ろから走ってきた車が右側から横前に接近してきた上に、その車は左右にフラフラとふら付いていた。 ぶつかりそうなほどな接近してくるので嫁さんはあわててハンドルを切って左へ逃げようとした。 その時相手の車と軽く接触したか、また自分がブレーキを踏んだか踏まないか覚えていない。 が、ハンドルを切りすぎた車は、路肩のガードレールにぶつかって止まり、その瞬間運転席のエアーバックが開いたという。 怖かったが恐る恐る後ろの席を見たら、お母さんは後部座席に倒れこんでいる、頭にタンコブを作っていたが、大丈夫?訊くとお母さんは思い出したように急に喋り出したと言う。 お母さんは数年前から認知症で、最近はアルことナイことを四六時中喋り続けている状態で、それを見て嫁さんは、これは大丈夫だな、と思ったと言う。 あらためて前方を見ると100メートルも行かない先で先ほど異常接近してきた車は横転した状態で止まっていて、そこから二、三人の職人風の若者が出てくるところだったと言う。 オフが話を訊いて推察するに、相手の車は比較的空いていた追い越し車線をかなりのスピードで走ってきた。 前方に車が詰まっているのを知りながら、そのまま飛ばし走行車線へ車線変更してさらにもっと前に行こうとしたが、イザ近寄ってみると、車線変更するほどの隙がなく、あわててブレーキを踏んだが小雨で路面が濡れていてスリップして、車は制御出来ない状態になったのではないかと思う。
 その後パトカーと救急車が到着したが、事情聴取は後にしてもらい救急車でお母さんを病院へ運んでもらった。 そこでお母さんのレントゲンやCTまでも撮ってもらったが、とりあえず骨などに異常はないことが分かった。 しばしの間現場で一人の警察官が言っていたのは、もし両者の車に接触がなかったろしたら、これはいわゆる両車による事故ではなくて、めいめいの自損事故となってしまいます・・・この状況から見てお宅にとってはまことに気の毒なことだと思いますが・・・と語っていたと言う。 
 今日になって分かったことだが、どうやら車は修理して再使用は無理だろうと言うことらしい。 さいわい嫁さんの車は任意の車両保険に入っていてそれなりの保険は下りることになるだろうが・・・どうやら修理すればその加入している車両保険の限度額を超えてしまうということらしい。 これだけの事故が起きたにも関わらず、二人ともたいした怪我もなく終わったのは車がたまたま頑丈な造りの車だったことが大きいだろうと思う。
 昨日は娘はハローワークへ出頭の日だったが、オフが携帯を入れて事情を話すとあわてて飛んで帰って来た。 夜になってその娘が自分のアパートへ帰り間際、お父さん、今夜はとことん**さん(嫁さんの名前)の話を訊いてあげないとダメよ、と言い残して帰った。 何を沙羅臭い!と思ったが、どうやら娘に足元を見すかされていたようだ。 わが娘に完全に隙あり一本、を取られてしまったようだ(涙)
 神経が立ってしまった嫁さんは睡眠薬を飲んだにもかかわらず、布団の中へ入ってからも延々と今日事故のことを、喋る・・・しゃべる・・・シャベル・・・状態で果たしてで眠ったのは何時頃だっただろうか・・・たしか4時ごろ嫁さんはお母さんのオシメを取替えに下の階へ下りたのだが、そのことを次の朝覚えていないほどその後はよく眠っていたようだが・・・