夢一夜

 お昼前あたりからあまり調子が良くない。 どこが悪いというわけではないが・・・とにかく食欲がない。 食事も無理無理に喉へ押し込んでいるような調子である。 昨夜寝つきが悪かったせいかもしれないが、本も読む気になれない・・・何もする気がなく日長ウトウトばかりしていた。 明後日からタンデムが始まるというのに、これではいけないと思うが体調だけはどうしようもない。

 廊下がズット向こうまで続いていた。 目の前にはひと一人いない夜の長い廊下が続いている。 そんな静かな廊下を点滴袋をぶら下げた点滴台をガラガラと押しながら歩いていた。 右手に見えてきた明るいナースステイションは部屋の隅までくまなく白い蛍光灯に照らしているのだが、そこには看護師が一人もいなかった。 三人いる深夜夜勤の看護師が今日は誰もいないのだなぁ・・・などと思う。 三人ともみんな病室の見回りに出かけているのだろうか?急なナースコールなどもあるだろうから一人は残っていた方が良いのになぁ、おかしいなぁ、と思いながらナースステイションを通り過ぎた。 再び前を見てさっきより廊下は一段と暗くなっていることに気が付く。 そこで初めて、これは何だかおかしいなぁ、と思う。 人がいない静かな廊下の先は暗くてよく見えない。 というより暗いこともあるが何だか廊下がずっとずっとどこまでも続いていて、その先があまり遠くて見えないようなのである。 その時アレッと思う、気がつくと目の前に片手で押している点滴台がないのである。 それなのにガラガラという引きづる音だけが静かな廊下に響き渡っている。 どうやら歩いているすぐ後ろの辺りからその音が聴こえてきているようなのだ。 おかしいなぁ・・・誰が?・・・と思うのだが、怖くて振り向いてそれを確認する気になれない。 と言うよりそれをしてはならないような気がしている。 ガラガラという音とともに時々キキィ〜キキィとキャスターがきしむ音も混じっている。 油が足りないのだろうか? などと思いながら、自分が何処へ行こうとしているのか分からなくなってしまっている・・・なのにガラガラという音とともに廊下を前に前にそろそろ歩いている。 そしてその廊下の向こうは暗くてよく見えないほど遠い。 昨夜、そんな夢を見た。