どちらもどちら・・・

 あと少しで再入院だが、再び病院生活が始まると思うだけで気が重くなる。 自家移植は一度より二度の方が再発の可能性が低いことは統計のデーターとして出ていることは知っている。 (三度目は患者に対してあまりにもダメージが大きいので行なわれることはないらしい)
 頭では二回目の自家移植の必要性を受け入れているのだが、仮退院の間に体調が思うように快復しなかったこともあって、再治療に対して気分が後ろ向きになっているのである。 しかし外見的には髪の毛も2センチほど伸びて黒々としているし、イビツだった爪も大方元の普通の状態になってきている。 だが、何処か自分の身体はおかしい。 少し良くなったと実感するが、すぐそのあくる日に悪くなっていると実感する状態が続いている。 ガンという病気になってあらてめて確認したことは、頭と身体は全然別物であるということだった。 そんなことは十分承知していることだったはずだが、思うように快復していかない体調を目の当たりにして、その事実をあらためて突き付けられている。 自分の身体は年相応だと思っているのだが、この間の数回の抗ガン剤治療で身体の年齢が十年は老けたという事実が何処かで受け入れられないままなのだ。  
 老化ということはそれだけ身体の回復力も失われると言うことだが、その身体の老化を頭がなかなか受け入れようとしないのだ。

 今週の初めだったと思うか、アメリカ最大の金融機関であるシティグループの株価が1ドル台まで値下がりして、巷で公然と国有化が噂されていた。 翌日FRPバーナンキ議長が議会で国内金融機関を国有化する必要はないとの見解を示したので、経営難に陥っていた金融大手シティグループの株価は上昇した。 今週中に議長の時期を得た発言がなければアメリカで第二のリーマンショックが起きていた可能性は十分あったと思う。
 しかし、一時的に株価は戻したがまたぞろジワジワ下げ圧力が働いている。 この先当分アメリカの動向から目が離せない。
 
 自由市場主義経済学の元祖アダム・スミスは、市場に任せておけば、神の見えざる手が働いて最後には最良の結果が得られる。 だから市場への参加者は、自分の利害だけを考えて行動していればよい。  これらの二つが組み合わさったものを経済原理(市場主義)の根本法則としてアダム・スミスは経済学を打ち立てた。 1930年代、資本主義経済は世界的な大恐慌に見舞われ、アメリカでは国家が経済へ介入して公共事業を起こして立ち直った。 これを理論的に唱えたのは経済学者ケインズだった。 しかしアメリカ経済は80年代再び財政赤字と貿易収支の赤字の双子の赤字に見舞われ行き詰った。 これを規制緩和政策を持って市場を開放することで切り抜けたのだが、これを支えたのが新自由市場主義経済理論で一切の規制を緩和して市場を自由競争に戻した。 金融市場の規制を緩和して金が金を生む金融資本主義がグローバル化の波に乗って世界へ広がった。 しかし、人々が自分の利益だけを考えて金儲けにいそしんでいる市場が、ついにバブル化して破綻し世界経済は急速に伸縮して再びデフレ化している。 これを見ていると、<市場を破綻させるように神の手は働いたのだろう>・・・と皮肉の一つも言いたくなる。
 オバマ政権がやろうとしていることは、自由な市場経済へ国家が通貨の流通量やモノの生産を管理介入して、いわば統制することで経済を立て直そうとしている・・・これって・・・言い換えれば国家社会主義ということだろう? と言うことは・・・かってマルクスが資本主義経済は自己矛盾で必ず行き詰ると予言したことが今になって起こっている、と言えないこともない。
 しかし、今となってはプロレタリアートが政権を奪取して共産主義社会が来る、などというその先のテーゼを誰も信じないが、自由市場経済が万能であるということも、同じように誰も信じないだろう。