映画 「ブラックホークダウン」と「平家物語」

 最近はケーブルテレビで映画を時々見ている。 昨日も「ブラックホーク・ダウン」という戦争映画をみた。 
 ブラックホークというのはアメリカ軍の戦闘用のヘリコプターのことであるが、実際の戦闘を描いた作品で、ウィキペディアの解説によると以下のようなことである。
 ≪1993年、国際世論におされた米軍は民族紛争の続くソマリアへ派兵。内戦を終結させようと、最大勢力ババルギディル族を率いて和平に反対するアイディード将軍の副官2名を逮捕するため、約100名の特殊部隊を首都モガディシュへ強襲させた。 当初、作戦は1時間足らずで終了するはずだったが、作戦の開始直後に、アイディード将軍派の民兵の攻撃により、2機のヘリコプター、ブラックホークRPG-7によって撃墜されてしまう。 敵地の中心へ仲間たちの救出に向かう兵士らは、泥沼の市街戦に突入していく…≫
 リドリー・スコット監督の映画で、、それにしても見はじめると画面から目が離せなくなるほどのものすごい迫力である。 
 ≪映画版における最大の特徴は、その徹底した描写である。従来の戦争映画とは違い、状況説明を最小限にとどめ、作品のほとんどを戦場という状況の直接描写に徹している。喧騒とした街に突如として降下するアメリカ兵、一般住民と民兵が入り混じった乱戦、少数精鋭のアメリカと数で押す民兵、現場と司令部との齟齬など、分かりやすい正規戦をモチーフとしたこれまでの戦争映画とは違い現代の不正規戦における混乱を的確に描写した、おそらくは初の映画である≫ と解説されている。
 最近ソマリア沖の海賊が世界的にも注目を浴びているが、この映画で描かれていた武装したソマリア民兵たちが後々地海賊になっての今日があるとも思える。 彼らは数百メートルある大型タンカーの船体のどてっぱらへも平気でRPG-7(対戦車ロケット弾)を打ち込むという。
 ここのところ戦闘映画を見ることが多く、その他「ロード・オブ・ウォー」とか 「ホテル・ルワンダ」とかなども見ている。
 「ロード・オブ・ウォー」では主人公をニコラス・ケイジが演じているのだが、武器商人という極悪非道な商売人を演じているが、彼ならではという憎めないキャラを生かして好演している。 たしかに憎むべきは開発途上国に殺人兵器を売ってお金を稼ぐ武器商人だえある。 だが、ここで描かれているのは個々人の武器商人を憎んでも、そこに需要があり儲けがある以上必ず次の商人がビジネス!と言いながら出てくるということだ。 憎むべきは国家体制を支えて利益を追求している国際秩序の既得権のあり方そのもの中にある。 
 嫁さんは、戦争映画は嫌いだわ、と言いながら横に座って画面を見ている、見終わった後はため息だけついてしばらく口もきかないことが多い。

 これらの深刻な戦闘に対して今読んでいる「双調平家物語」の中の保元の乱の中では・・・崇徳上皇おわします白河御所西門を守る源為朝に向かって奮戦する。 やあ、やあ、やあ〜我こそは・・・の世界であるが・・・以下は平是行なる若武者の口上
  〜是行と申しても名乗る甲斐なきものであります。お聞き及びではございますまい お目にかかるは今日が初め 来れなる者は安芸守殿に従う伊賀の国の住人 山田の小三郎是行 それとは知られるものではござらんが 往古 鈴鹿の山の名高き山賊 ‘立て烏帽子‘ を絡め取ってお主上に奉った山田の庄司行孝の孫なり 海賊、夜盗、強盗を絡め取ること数知れらず 大事の合戦には三度参戦し一度も不覚をとったことはござらん 身分の高下を問わず 老いたる者も若き者も 弓矢を持つことは身の誉れ 心の猛く真ぐなることと承る たがいに弓矢を持つ身 慕わしくはござらんか 名高き御曹司を一目なりとも拝みたいと存じあげる 御矢一つを賜って 死にもいたさば後生の勲 生き延びればまた この世の名誉にいたしたいと存じて罷り越した〜! このような長口上を述べた上で、源の為朝に向かって是行は弓矢を射掛けているのである。
 いずれの時代に生き、そして死んでいくのが幸せなのかよく分からなくなる。