変人

 今朝方電話が鳴った。 と言っても布団に入ってからまだたいして経っていない頃で、1時過ぎ頃だったと思うが・・・嫁さんが出ると、電話は下の階の父親からであった。 今日はまだ来ていないみたいだが・・・と言うことだったので、嫁さんが、少し前に12時過ぎごろ行ったわよ、と答えていた。
 その後夜中の三時頃に目が醒めて、少し早いけど行ってくるわ、と言い残して嫁さんは再び下の階へ母親のオシメを取替えに降りていった。 だが、その後4時過ぎだったが再び電話がなり、嫁さんはまた降りていった。 帰った来て言うには、父親からなの電話は、今度もまだ来ていないよ、ということだったらしい。 さらに父親が、あんたが降りてこないから気になって眠れないんだがねぇ、と言うので腹が立って、3時過ぎに来たのよ、その時はお父さんは眠っていたから覚えてないんでしょう、と言うと、そうか、と言ったきり黙りこんでしまったと言う。 どうやら父親は昨日今日と少し神経症的な症状になっているみたいである。
 父は昔から人騒がせな人で、官舎に住んでいた頃、夜中に同僚を起こしに行ったのだが、狭い官舎だから玄関から声をかければ十分聞こえるのに、わざわざ寝室の中へ入っていって、布団の上からその人を揺すって起したという話なのよ、その人の奥さんが翌日母親のところへそれを言いに来て分かったのだけれども、一緒に寝ていたその奥さんは本当にビックリしたらしいのよ、そりゃそうでしょうに・・・そんなことにまったく気が回らない人なのよ、うちの父は・・・その夜は、そんな話を聞きながらもう一度朝まで眠った。

 オフの田舎でも出入の電気屋があり、そこに従業員が一人いたのだが、彼は初期の頃のテレビなどは裏のカバーをはがして大体の修理するくらいの腕があって各所から重宝されていた。 ただ、その従業員は少し変人で得意先のどこの家でも玄関で、こんちわ、と一応言んだが、返事があろうがなかろうがそのままその家へ上がって行って、あらかじめある場所を知っているのでテレビに修理など仕事に掛かるのである。
 オフの友人のところでも朝からテレビの調子が悪く修理を頼んでいたが、なかなか来なかったと言う。 たまたまその日が休日だった友人が奥さんと布団に入って昼間からことを始めていた。 矢先、その従業員が、こんちわ、と言って上がっ来たらしいのだ。 友人はあわてて布団から出てそこらに脱ぎ捨ててあったパンツを穿いたらしい。 その従業員は、その様子を見ながらテレビの裏のカバーを止めてあるビスを回していたと言うのだ。 
 友人はまだそれで済んだから良かったが、その奥さんはテレビを修理する間ズット布団の中で小さくなっていたという話である。 昔はこの手の変な人はどこにでもポツポツいたもので、また田舎では家も今のように外部から中が見えないということはなくて、大体どこの部屋で誰が寝ているぐらいは近所の誰でも知っているようなものであった。