畑仕事

 昔、家の敷地内に畑をつくっていた。 その畑で家族が食べる野菜をつくっていたである。 それまでクワさえ持ったことはなかったオフだったが、スコップ、クワ、カマなどをホームセンターから一式買ってきて揃えて、土を自分の力で耕して畑を作った。 家族が食べる程度の野菜をつくる程度の畑だからとタカをくくっていた。 土を起して耕して畑だからまわりよりも一段高い畝を造っていく。 クワで土をおこしていくのだが、おおよそ10メートルほどの長さの畝を三列作る予定でいたが・・・ところがクワやスコップを使って土を起こしていく作業は思っていた以上にキツ〜イ重労働だった。 
 10メートルほどの長さの畝を一列作るのに半日掛かり、それを何とか造ったが終わった時は息が上がり、もう身体がヘトヘトである。 そして一晩寝た次の日、腰が痛くて起きるのも苦労するほどの情けないザマだった。 普段から仕事といえばデスクワーク程度で、ほとんど身体を使う肉体労働をして来なかった報いである。 その翌年だったか翌々年だったか忘れてしまったが、ホームセンターで売っていたミニ耕運機を買った。 値段はもう忘れてしまったがたしか数万円だったと思う。 手押し式だがガソリンを入れてセルを引くとエンジンが掛かり、クラッチを入れるとローターがまわり、その回転で土を攪拌しながら少しずつ前に進んでいく。 10メートルぐらい進むのはわずか数分で済む。 ミニだからローターも小さく重量も軽いので土を深く起すことは出来ないが、それは何回か同じ箇所を繰り返して起せば済むことである。 ガソリンを使うといってもっせいぜい2、3リットルもあれば十分で数百円の出費で済むことである。  ミニ耕運機を使い出してからは重労働だった畑仕事から開放され、適度に汗をかく程度のほどよい労働になった。

 ある時秋に種をまき来年のキャベツをつくった。 わずか十数個程度のキャベツだった、もちろん畑では全部の野菜が有機肥料であり無農薬栽培だった。 キャベツの芽が出始めた頃から待っていたように畑の上にモンシロチョウが舞い始めた。 ちょうどその時隣の田んぼでもお百姓がキャベツを造っていた。 隣の田んぼといっても三反田なのである。 一反は三百坪であるから九百坪(2700平米)の一面が全部キャベツ畑なのである。 ところがその畑の上にはモンシロチョウが舞っていない・・・驚くことだったが、その三反田のキャベツ畑の上にはたった一匹の蝶でさえ舞っていないのだった。 一方こちらのたった十メートルにみたないオフの一棟の畑の上には、毎日毎日数十匹のモンシロチョウが舞っている。 キャベツは葉を付け、それがいったんは広がって、その後徐々に葉は巻いていくのだが、その葉にモンシロチョウが卵を産み、キャベツの葉っぱには青虫がうようよ付きはじめたのはすぐだった。 朝に一つの株で十匹ほどの青虫を取り除くが、もうその日の夕方には一株に十匹ほどの青虫が葉を齧っている状態である。 毎日朝と夕に葉の裏表についている百匹以上の青虫を取り除くのも楽な作業ではない。 葉の上一面に細かい目の網などを被せることも考えたが、その時は意地でも青虫を取ることにこだわった。