体温は、37度台で微熱が続いているが、体調の方はここ一週間程あまり変わっていない。昨日ウィルス検査のために採血をした結果が明日にでも分かるのでその結果待ちだが、抗ウィルス剤を使っている割には、微熱が下がらないのは少々気になる。時々は36度台に下がることもあるので、少しは良くなっているのだろうと考えることにしている。
 ところが二,三日前から顔面から始まって身体のあちこちが所々痒くなり始めた。皮膚の表面が痒いというより、その少し内側の辺りが痒いのである。痒いのでそこを掻いていると、その周辺にかゆみが広がってしまう。なるべく痒くても掻かない方がいいのは分かっているが、ついつい痒いので掻いてしまう。医者に言ってみたが「多分副作用だろうけど、ひどくなるようでしたら皮膚科の方で診てもらうようにします」と言うだけである。
 12月の半ばになった。この季節になると蟹の事を思い出す。オフがまだ小さかった頃近所の魚屋さんの店先には茹で上げられたコウバクガニ(関西ではセコ蟹、ズワイガニのメス)が山のように積み上げられて湯気を上げていた。そのことを思い出す。たしか小ぶりのものや足の二、三本取れたのだと10円で2,3匹買えたような記憶がある。近所の子の誰かがそれを食べているのを見ると、欲しくて10円を貰いに家に走り帰ったりしていた。今では1,000円出しても1、2匹買えるかどうかの値段になってしまったコウバコ蟹だが、先日外泊した時にオスのほうのズワイガニの鍋をした。こちらも今ではとんでもなくお値段が高いので、ロシア産の冷凍されたものを解凍したものを使った。それでも蟹は蟹で大変美味しく頂いた。子供の頃に食べた懐かしい味はたいていその人の幸せと結びついて記憶されているものである。茹であげられて山のように積み上げられたコウバコ蟹を、もう一度道端にしゃがんで夢中でむしゃぶりつきたい、と今でも心の隅で思っている。