画家の女

 ゴールデンウイーク明けの日に仕事場へ急ぐ人々を見下ろしながらゆったりと食事するのは気分が好いものね…と屈託なく笑っている相手を見ながら、何か違うぞ…と思った。 それが画家の女性に違和感を感じた最初の瞬間だったと思う。 オフ達がモーニングを取っているのは西新宿の高層ビルのレストランだった。 オフの子供達に会いたいというので二人で東京に出た。 急きょ検索したが連休中は都心にはホテルの空きが少なくて、前日の夜は町田のホテルに泊まった。 ビジネスホテルに近いお粗末なホテルだったが、相手はそのホテルのでの二日目をキャンセルして西新宿の高級ホテルへ泊まることになった。 トルコへのパック旅行のあと、忙しいパックじゃなくてバリ島でも行ってのんびり過ごせば良かったふと漏らしたが、相手はすぐさま相談もなくバリ旅行を申し込んでいた。 これには驚いたしはっきり断った。 やや自己チューな点は芸術などを仕事にしている人なら仕方ないか・・・などと良いふうにとっていたが、そんな事が何やでじわじわ気持ちが離れていく。 それでもその女が勝手にオフの家へ来たりするが、オフはやりたいようにさせて山の家の仕事を続けていた、夜は夜で深酒して先に眠るだけだった。
 数時間も電車に乗って来ても相手もしてくれないの・・・
 来ても相手をしないと言ってあるのに、勝手に来てるんじゃないか・・・
 そんな言い合いの会話がなされるようになったが、しばらくして昼夜時間を問わずオフの家の電話が鳴るようになった。 出ると一方的に自分の言いたい事をしゃべりまくってガシャンと電話が切れる。 当時オフの父親がパーキンソン病で入院中で、夜中の電話でも出ない訳にはいかない事情があったので、これで一時電話ノイローゼになった。 この話の続きは気分が悪くて続けるのも嫌なので、話はここで終わりにする。 代わりに余談を二つ書いておく。

 実はその女が最初に逢いに来た時駅で待ち合わせたのだが、いわゆるブランドのコートやサングラスや衣服で身を固めた相手の姿を見て、知らん顔してすれ違った。 山の仕事をしていた頃だったので、オフはところどころ穴のあいたセーターに塗料で汚れたズボンを穿いているような格好をしていたのだが・・・
  
 彼女がそれまでその女が付き合ってきたのは、京大の医学部の現役の教授だと言われた時に・・・京大の医学部と言えばまさに日本の秀才の集まりだろう・・・相手が二重丸だとしたらこちらは番外の無印だろうが、この道(?)ではそんな男に負けるわけにはいかないぞ、とやたら入れ込んでてしまった事がアダになってしまった(笑)
 
 その後、オフの女出入りは数人続くが・・・その中には最初の頃に書いた例のベニテングダケの女もいるのだが・・・これらの話も今回は割愛して次に続く・・・