自由市場

 外泊して今日で3日目。昨日に続いて今日も三食をまあまあ食べた。昼にケーブルテレビでデビッド・リンチの『ストレイト・ストーリー』を見た。この映画を見るのは二度目であるが、一度目よりもずっと内容が心にしみた。一度目よりも二度目に見たときのほうがよいと思える映画こそがいい映画なんだろうなぁと思った。


 今日のニュースに 深刻な経営危機に陥っている米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の経営破綻(はたん)が現実味を帯び始めた・・・というニュースがあった。
 

 http://mainichi.jp/select/biz/news/20081123ddm008020133000c.html

GMなど米自動車大手3社(ビッグ3)は米政府・議会に緊急支援を要請しているが、議会側が設定した12月2日の期限までに大規模リストラを盛り込んだ再建策を提示しなければ支援実現は難しく、同社取締役会が議論した米連邦破産法の適用申請が選択肢となる可能性もある

 とニュースは続けて書いている。 米議会はここ一週間内に再建策を提出しろと迫っている。 さらにこのニュースでは最後に

民主党ペロシ下院議長とリード上院院内総務はビッグ3に送った書簡で、ボーナスなども含めた高額の役員報酬のカットを再建計画に盛り込むよう要求。議会内には「ビッグ3が存続できると確信できる計画でなければ支援すべきでない」と破産法適用を容認する意見もあり、期限内に抜本的な再建策を示せなければGMが破綻に追い込まれる可能性もある

 このニュースからはアメリカ政府に緊急支援(すなわち国民の税金をあてにして)を要請するまでに追い込まれていながら、GMの上級役員はボーナスも含めた報酬をカットすらしていない、と読めるのだが、日本人というか少なくともオフの常識では考えにくいところである。
 バブルが弾けた後会社のリストラが言われ始めた頃、日本でも会社は誰のものか、という議論がさかんになされたことがあった。 その時は市場経済主義に基づいて欧米流の原則論が強調され、それは株主のものである、という認識が多数を占めそれでケリがついたようであった。 それに対して経済学者の岩井克人氏などは、そこで働く社員や家族を含めた総合的なものとする見方のほうが優れている、と最後まで食い下がっていたと思うしオフもそれはもっともである、と思えた。 市場経済主義ではあくまで会社は株主のもので、その株主の多数意見が選んだ経営者がそれによって会社の利益を出ると考えるなら社員の解雇もそれは自由である、という考えは成り立つだろうが・・・自分たちのボーナスをも削ることなく国家に支援を要請するのは同義的にも行き過ぎのものがあると思わざるを得ない。 いや、同義的と言うより、ここにはもっと根本的な問題が横たわっている気もする。 それは利益万能という資本主義の根幹に関わる問題まで根が深そうな気がする。 

 ブッシュ米大統領アジア太平洋経済協力会議(APEC)の最高経営責任者(CEO)サミットで演説し「自由市場が繁栄をもたらす」と述べ、「世界的な保護主義が世界的な破滅を招いたことが大恐慌の教訓だ」と指摘したとある。 これにはオフも異議はないのだが、現実の格差を目の前にして自由を何処まで譲歩するのか・・・という問題をないがしろにしてしまうと、ある意味では逆に世界に混乱を持ち込むことにもなるのだ。 なぜなら、自由市場では、よりたくさん持つものが強いという原則があるからだ。 同じ利息が付くとしてもすでに一千万円持つ人と、千円しか持たない人では・・・一年後の所得に大きな差が出るからである。