友人

 頭頸部外科という聞きなれない科の受診をする。 頭頸部というのは昔で言う耳鼻咽喉のことである。 異常は何もなかった。 引き続き明日は口腔外科の受診も予定されている。 夜に嫁さんも含めて来週から始まる治療にについての説明を受ける。
 今夜「第一回 自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法」についての説明および同意書 と長々しく書かれたパンフレットをもとに説明を受ける。 同意する。 が、これが先週だと多分躊躇して治療のしばらくの延期を申し出ていたような気がする。 先週だと治療を受ける体力にもうひとつ自信がなかったからだ。 

 今日、日中友人が見舞いに来てくれた。 大学の時の友人で神戸市に住んでいるのだが、彼が来てくれたのは入院してからこれで三回目である。 大学時代オフは入学した年の前期以外ほとんど授業に出席しなかったのだが、その短い前期の間に顔見知りになり、大学から数駅離れた所にあった彼の家へ招かれ時々遊びに行っていた。 地方からの学生だったオフは当時生活を切りつめてロクな食事をしていなかったが、彼の家へ行くとまともな家庭料理が食べさせてもらえ、それが嬉しくて何度か通っていたし、泊めてもらったこともあったと思う。
 また大学を除籍された後だったか先だったかもうすっかり忘れてしまったが、大分県の国東半島の先にある姫島という小さな島、そこが彼の両親の出身地だったのだ。 そこの海辺の家へ十日間ほど一人で滞在したこともある。 そこの家には凛としたお婆さんが一人暮らしをしていて、毎夜夕食時にコップ一杯の焼酎を勧められ、それを飲んでパタンキュウで眠りについていた思い出がある。 大学時代の数少ない友人だが大学院へ進んだ後、短くない期間今で言う引きこもりをしていたことがあったと聞いている。 そんな彼だが神戸市にあるカソリック系の中高一貫学校の校長を数年間務めていた。 だが、ようやく来春でその職から解放されることになった、と今日サバサバとした顔で語って帰って行った。