反ユダヤ主義

外泊二日目だが、朝8時過ぎに高速バスで下の息子が到着する。
食べたかったで芋粥で朝食。
 日米の株価が連日ジェットコースターのように上り下りを繰り返している。後退局面での疑心暗鬼に駆られた人間の心理状態をそのまま映し出しているようである。長期的なアメリカの凋落を書いてきたが、今読んでいる内田樹氏の『町場のアメリカ論』の中に以下のような面白い記述があったが、それを大まかに要約すると以下のようになる。

≪かつてイランにおけるホメイニ氏の宗教革命やベルリンの壁の崩壊の予言を的中させた未来学者のローレンス・トーブという人がいるという。この人はアメリカは遠からず没落するだろうが、その没落がどういうプロセスをたとどるかについて彼独自の変わった視点での論理を展開している。トーブ氏の視点のキーワードは反ユダヤ主義である。アメリカにおいて近い将来組織的な反ユダヤ主義暴動が起き、これに対して大多数のアメリカ大衆はかつての帝政ロシアナチスドイツと同じように座視するか、無視するか、あるいは迫害に共感を寄せる。この反ユダヤ主義の中核を成すのは社会的下層にいるヒスパニック、黒人、ホームレス、エリートコースから脱落した白人であるが、彼らはその社会的不満をユダヤ人に向け、スケープゴートとして彼らの不満を解き放とうとする。富や文化資本を独占してきた白人エリート層もそれに対してあえて強い反対を唱えない。その結果、アメリカのユダヤ人たちは、彼らの活動領域は小売や軽工業の中規模経済エリア・金融メディア専門職に集中しているのだが・・・彼らはイスラエルとして移住していくのだが、彼らの離国はアメリカ経済にとって大きな損失となる・・・≫
トーブ氏の予言はこのようなシナリオでアメリカの内部からの崩壊が始まるという訳である。

 さらに内田氏はそれに加えて、いずれアメリカでは移民してきたヒスパニック系市民が最大規模の集団となり、建国以来多数を占めていた富めるアングロサクソン系の白人は少数集団に転落する。アメリカの建国システムが多数の支配であったのだが、ここでこれまで一度も経験したことのなかった多数の支配に逆転が起こる訳である。アメリカを治めてきていた富める白人層、権力や財や情報を握っていた豊かなエリート層は少数派に転落し、富める者と貧しき者との間に対立が激化してくる。地滑り的なアメリカの没落は取り返しのつかないものになっているであろう、と内田氏も締めくくっている。

 歴史学者ハンチントン氏が述べているように、今後の世界は古い文化を母体にするいくつかのブロックに分かれるのだろうか。それとも多極的な世界になるのだろうか。たしかハンチントン氏は、西洋文明、イスラム文明、スラブ系文明、ヒンズー文明、東アジア文明、アフリカ文明、南アメリカ文明、日本文明にわけていた。これらの文明の中で日本だけが特別視されているのがよく分からないが、オフの考えでは、日本も東アジア文明に含まれるべきであるだろうと考える。文明が多極化するのは良いこともあるが、当然悪いこともある。今のオフはどちらかといえば、多極化のほうに危機を感じる。

このことについてはまた明日書くことにしよう。