『海辺のカフカ』の再読

「2回分の移植の量は十分とれました」と昨日の夕方、先生より報告を受けた。それを聞いて、先生に手を合わせて拝みたいくらいだった。夜になって便意をもよおし、室内に持ち込まれたポータブルトイレで便をしたが、下痢便だった。それよりも何よりもその便は先の抗ガン剤の後に下血した時と同じ匂いで、気持ち悪くなるほど臭かった。あれからもう一週間以上経つのにまだ体内には抗ガン剤の残りかすがあったのだなァと思った。その後定期的に波のようにやってきていた胃の重い感じは少しずつ治まっていった。今日、朝の採血の結果が出て、なんと白血球が15,000を超えていた。今日から白血球を増やす注射はストップになった。終日安静にという指示だったが、特に気分が悪いこともなく、ただぼんやりとして時々眠くうつらうつらするような1日だった。

 村上春樹の「海辺のカフカ」を少しずつ再読している。読みながら驚いているが、読んだ覚えのない箇所が何か所もある。当然のことだが、先に読んだ時は見当違いな読み違いをしていたことになる。まぁ、読み違いはよくある事だが、これほど大きな読み違いもこれまであまりなかったような気がする。確か、この本を数年前最初に読んだとき、当時のブログに感想を書いた事を覚えている。(今このパソコンではその頃の日記までさかのぼれないので、引用は省くが)書いた内容については少し覚えている。新聞で発売されたばかりのこの本の書評を読んだのだが、そこには「村上春樹は「アンダーグラウンド」を経て、この作品で初めて星野クンという他者を登場させた」と書いてあった。それを読んでオフはそんなバカなと思って日記に書いておいた。星野クンというのは、他者として登場したのではなく、物語を進める上で必要だから作られただけの人物で、それはナカタという内面のない老人の内面を語るのを補うため、或いはその老人の行為をより分かりやすく説明するために登場せざるを得なかった人物なので、ただそれだけのために出てきた人間である。今再読中だが、色々確かに読み違いをしているが、それだけは間違いないと確信出来る。