その後

 昨日のブログの後の話であるが、それまでの4日間丸々何も食べていなかったし、薬も飲んでいなかった。その事を看護師さんから「調子悪くても薬だけは飲まなければいけません」と指摘された。まったく飲みたくなかったが「それもそうだな」と8錠程の薬を飲んだ。その後、便意をもよおしてトイレへ行きたくなった。この5日間は部屋にポータブルトイレを持ち込んでいたが、初めて部屋外のトイレへ行った。排泄物を流そうとして見ると、真っ黒な液の上に濃い茶色の油状のモノが浮かんでいて、強烈な嫌な匂いがした。思わず流してしまってから、「しまった!お腹から出血しているんだな」と思ったが後の祭りだった。看護師さんに話をして次の便を待つようにしたが、全然食欲もなく夜を迎え、夜の薬を飲む時間になったので再び嫌々薬を二口ほどの水で飲んだ。30分程した頃だろうか、急に吐き気がして吐いた。鮮血を数回吐いた。日曜日だったのでICU(集中治療室)の医師が来て、点滴している輸液の中に止血剤等を数本追加し、とにかく明日の朝まで様子を見ることになった。もう吐き気はなかったが胃のあたりは依然として重苦しさが続いた。ところが、10時過ぎになるとこ三日間程ろくに睡眠が取れていなかったので眠くなって来て、朝6時の採血まで眠った。採血の後、再び1時間半ほど眠った。気がつくと、これまでの大量の気持ちの悪いスッパイ唾液ではなく、ごく普通に近いような唾液が出るようになっていた。その感じで自分の身体は回復してきたな、と感じた。

朝食に薄粥をスプーンで二、三口なら飲めそうだと思い、看護師さんに言うと「それはまだで、お昼前に採血の結果が出るのでそれまで待ちましょう」と言われた。昼遅くお粥をスプーン二、三口でなく、お茶碗軽く1杯ほど食べて薬を飲んだが幸い何ともなかった。

これまで、オフは「身体の調子が多少悪くても食事は取った方がいい」とか「調子が悪い時は薬をかかさずにきちんと飲んだ方がいい」と考えてきた。ところが、この病気になって第1回の抗ガン治療の後、無理して粥を食べて、たちどころに全部吐いた事があった。その時はかなりショックだったが、嫁さんに「調子が悪い時は無理して食べるより絶食した方が良いし、薬もどうしても飲みたくないのだったら見送った方が良いのよ」と言われてそれもそうだなと思うようになった。それが、今回の4日間の絶食・薬を飲まないに繋がった。

 人間は、固定観念に縛られているものだと思う。その固定観念は概ね時代の流れの中で変わっていくが、大体同世代の人たちは同世代の人達と同じような固定観念を持っているものである。例えばオフの場合、今回のように健康のためには毎日きちんと食事をし、薬を飲み、毎日最低7時間睡眠をとった方が良い、といったのがそうである。その固定観念が崩れて自分の身体の調子は自分の身体一番よく知っているものだと考えるようになった。もうすぐ百歳になる日野原重明医師が「医者は出来るだけ患者と接して話をして、治療を考えていくというのはもっとも大切な事です。」と言っていたが、その趣旨がよく分かった。

 闘病という言葉がある。
 今回の治療は抗ガン剤を使って「ガンを叩く」という治療である。前も書いたように、身体を防御する方向で治療がなされているわけではない。自己免疫システムのガードをぎりぎりまで下げたうえで、身体に毒であるはずの抗ガン剤ガンを使ってガンを叩くという治療である。そのために多少の身体の不調はいたしかたない、という考えである。オフはこれは正常な治療ではないと考える。でも今のところこれしか取りようがないのでその治療を受けている。