顧客のニーズ

オフの上の息子も時々ブログに日記を書いている。最近、「なれあい」というタイトルで以下のような日記があった。


物を作って売る人。
物を買って使う人。

今は、とある大病院さんのシステムを、うちの会社が一手に引き受けている。
物を作るのも、うちの会社だし、その物を使ってサービスを提供するのもうちの会社になるのだ。
IT業界では、SIとか、SOとか呼ばれる。

現在の僕の仕事は、後者の物を買って使う人の役割に近い。
実際に物を買うのはお客さんだが、お客さんがものをきちんと使えるようにヘルプするのが、メインの仕事だ。
すごく困るのが、物を作って売る人と、それを受け入れるのが同じ会社だと、物を作る人達が、すごく甘えるのだ。
要するに、品質が低いものを無理やり受け入れさせようとする。
当然、受け入れる側としては困るので、反発するのだが、同じ会社だと波風を立てないようにというか、波風を立てると、なぜか孤立するのだ。
これが、別会社だと会社一丸となって、抵抗できるのだろうが、なれ合いというか、すごく嫌な感じだ。

父が、相手の意見も聞いて物事を・・・という話をしていたのを思い出すが、仕事に関しては、完全に割り切れる。
仕事はシンプルだ。答えが明確で分かりやすい。
譲れない部分は、逆立ちしても譲れないし、譲れる部分は、逆立ちしなくても譲れる。


正しいことと、正しくないことが、はっきりと分かるような単純な構造なのだと思う。


プライベートとは違って、価値観の相違が無い、純粋なビジネスの世界だからだと思う。


責任範囲等は、契約で決められている。
とはいえ、なんで、孤立するのかなぁ・・・

この日の日記を読んでいて、以前に読んだ内田樹氏のブログ「内田樹の研究室」
http://blog.tatsuru.com)の中の 2007 06 21 の文章を探し出して、読み返してみた。

 その日の内田氏の日記の要旨は以下のようなものである。
 内田氏はいきなりその中で、CSってご存じですか? 書いている。CSとは、英語のCustomer Satisfactionの略語である。一般的には「顧客第一主義」とか「顧客中心主義」というふうに訳されている言葉だが、ビジネス的には「顧客のニーズ」という意味らしい・・・だが、それは違うだろうという話を、講演を依頼された時に話し、それを後日日記に記載しているのである。
 ズバリ内田氏のいう結論だけを抜き出すと≪「顧客のニーズ」なんか、あらかじめ存在するものではない。≫となる。そして、ニーズは「ニーズを満たす制度」が出現した後に、事後的にあたかもずっと以前からそこに存在していたかのように仮象する。ニーズはそれを満たす商品やサービスを提供するサプライヤーの側が創り出すものである。…という風にいかにも構造主義者らしい、明快で痛快な答えを出している。
 実は以上のような結論の話を内田氏はある日真面目に聞いている三菱東京UFJ銀行の行員を前にして講演したというのだから、読んでいて笑いが止まらない・・・


読み返してみると、息子のブログの内容とは直接何の関係もない話だったが、何か関係あると勘違いしてしまった。
勘違いしたわけだが、まったく関係ないということもない。二つの話の関連を見つけようとすれば、以下のような事が言えると思う。
つまり、商品とかサービスというのは常に両面性を持って成り立っている、と言うことだ。
商品やサービスなどだけではなくて、「顧客のニーズ」までもがあたかもそれがあるかのごとくつくり出されているのである。それらをつくり出しているのは一方では生産者つまりサプライヤーの限りない欲望であり、同時に消費者の限りない欲望であり、両者はともに同じ人の欲望を根城として発生している訳である。であるから商品とかサービスといっても、それらのは常に裏の面と表の面を持っているので、これらは欲望としては同根であるのだが、欲望のあり方に齟齬が起きることもある。
 すると、最近大流行しているようだが・・・マスコミに囲まれて生産者が消費者に向かってペコペコと頭を下げる・・・・アハハ・・・な映像が流されてくるという訳である。