毒をもって毒を制する

現在は小康状態であり、パソコンをしばらく見たりする程度の元気はあるのだが、自分でキーボードを打つと非常に疲れる。実はこの日記も、今回神戸に来てくれている娘に口述して打ってもらっている。

さて、がん治療についてだが、一般的には現在以下の3つの方法が行われている。
1.手術による腫瘍の除去
2.抗がん剤投与による治療(化学療法)
3.局部への放射線を当てて腫瘍の破壊

それぞれがんの出た場所や種類や進行によってこれらの治療法が組み合されたりして治療が行われている。
オフの病気である多発性骨髄腫は、腫瘍が身体のある部分に出来る訳ではなく、血液の中に無数にある小さな形質細胞1個1個に腫瘍が出来ているので、わざわざ多発性と呼ばれ手術や放射線治療は行えない。
血液中に抗がん剤を点滴してその形質細胞を破壊し、数を抑える治療法となる。こういう化学療法の始まった歴史はさほど古くなく、有効とされて数十年しか経っていない。
詳しくは知らないが、抗がん剤と同時にステロイドをセットで使うようになっている。ステロイドというのは、副腎質ホルモンのことで、自分の身体の免疫を抑制する働きをもっている。だから臓器移植などをした場合、身体に拒絶反応が現われるのを抑える働きをしている薬である。又、これも詳しくは知らないが最近流行っているアトピーやアレルギー疾患などにも理由は分からないまま効果が出ていると言われている。
抗がん剤を調べてみると抗がん剤のおおもとは第一次世界大戦でドイツ軍が使った毒ガスであった。

抗がん剤の歴史
抗がん剤はそもそも毒ガス(マスタードガス)の研究からスタ−トしてます.1915年,第一次世界大戦中にドイツ軍によって実際に使用されたこの毒ガスは皮膚に激しいびらん性の障害をきたすと共に,造血器や消化管に対する激しい副作用が知られるようになりました.マスタードガスを水溶性に改良したものがナイトロジェンマスタ−ドであり(1935年)、この薬剤の造血臓器系に対する作用を利用して1942年にはエ−ル大学で臨床実験が始まり、1943年には悪性リンパ腫に対し効果があることが示され化学療法の歴史が始まりました。
( 『抗がん剤治療』より http://kawa2000.at.infoseek.co.jp/index-5.html


また話はそれてしまいそうだが、第一次世界大戦後の軍人の集まりの写真を見て驚いたと書いてあった本を読んだことがある。何に驚いたかといえば、写真に写っている半数以上の人達が手や足、身体に障害を持った人達ばかりだった、つまり半数以上の人が不具者だったことに作者は驚いたのだ。
それまでの戦争はナポレオン戦争で約40万人の戦死者が出たのが最大の戦争であったが、第一次世界大戦では死者約770万人以上、負傷者約2千万人以上いたのだから、これは決して大げさな話ではないと思う。その時に負傷者の手足をくっつけたりする乱暴な外科技術が飛躍的に進歩したと言われている。その後、第2次世界大戦ではさらに多くの死者と負傷者を出している。
オフがまだ子供だった頃、盲腸は言うに及ばず胃潰瘍胃がん…なんでもかんでも外科医は身体にメスを入れて悪い部分を取り除いていた時代が続いた。それはまあ別としても、医学の進歩といってもこの2度の戦争に負うところが大きい。

さて、抗がん剤治療といっても外科の手術とは違い、悪性のがん腫瘍を殺すためにメスの代わりに身体に毒を入れるのだ。当然だが強い副作用も起きる。その副作用を緩和するために免疫抑制剤であるステロイドを使うわけだ。いわば毒をもって毒を制するという方法である。
抗がん剤治療というと、こんなことは当たり前のように言われている昨今であるが、自分というものを守っている免疫ガードシステムを下げてまでしてそれを行うということである。よく考えてみるとこんなに恐ろしいことをよく考えついたものだと驚いてしまう。くどいようだが、自己というもののガードをぎりぎりまで下げて、毒をもって自己内に出来た不必要なものを殺そうというわけである。人間というものが免疫システムで自己や自己の身体を守っている、あえてその逆を行って病気を治そうというわけだ。これによって結果が出るからと言って、本当にこんなことが良いことなのだろうか。
がん治療を受けながら少し良くなった状態でこんなバカな考えに取りつかれてしまった。

今日はここまでにしよう。