この間の経過

 先月の27、28と二日間抗ガン剤アルケランの投与が続いた。その後1日おいて、30日に前に採血して冷凍保存してあった自己末梢血骨髄移植が行われた。その週のうちはこれまでの抗ガン剤が入った時と同じで気分は低下し、吐き気や不快感が続き、食事も食べられなくなった。又月が変わって今月に入ってからは段々それが強くなり、白血球数も2、3千から11/4には100、11/5には0まで下がり、いわゆる血液中に白血球がなくなってしまう状態になった。こんなことは自然な状態では人には起こりえないことである。普通は菌などに侵されると外部の異物を排除しようと戦うため白血球は増えることはあるが減ることはない。

骨髄移植をする前には、大量の抗ガン剤投与が行われる。そのためガン細胞だけでなく正常な細胞も完全に破壊してしまう(移植前処置)ため、白血球が極端に減少してしまうのだ。また、これは輸注した骨髄液が万一拒絶されないように、患者の免疫担当細胞を無くしておく必要があるてめでもある。 さらに移植した細胞は骨髄に入り込んだ後、すぐに白血球を造り出すわけではないので、 移植後もしばらくの間、白血球が少ない状態が続くわけだ。

このような状態が続くと人間は外部の全ての菌に対して無防備になるので、超危険な状態になっていることになる。 危険なので特別なクリーン室に移されるのだが、幸い個室だったので大型の空気清浄機を持ち込み、上半身をすっぽりそれに覆われて毎日を過ごしていた。連日、抗生剤や白血球を上げるグランという薬を大量点滴するのだが、なかなか白血球は上がらず、11/7に100、11/8に130・・・・そして今日11/10に2600へと急激に上がった。

順を追って書いてみれば以上のようなことなのだが、普通の人間には決して体験できない体験をしてきた。いわば自然の摂理の逆を行く体験なのである。ガンをやっつけるためという目的のためだけに現在の医学が考え出した最良の治療法がこれである。幸い白血球数は上がってきて徐々に回復に向かうだろうと思う。元気になれば副作用の苦しみも徐々に忘れていくだろう。だが、今これだけは忘れないでおこうと思っている。「これは根本的に間違った治療法である」という事だけ。