映画 「アイリス」

 帰宅三日目の昨日、弟夫婦がお昼過ぎお見舞いに須磨のマンションへ訪ねてきた。 二人が帰った後何となく体調がイマイチとなり、ソファーに横になりケーブルテレビで映画を観て過ごした。 三本の映画を観たが最後の作品が「アイリス」というイギリス映画で、老後アルツハイマーで苦しんだイギリスの女性作家アイリス・マードックと、その夫の生活を描いた実話ドラマ。 そのあらすじは以下のようなもの、
 
 頭が良くて哲学や文学議論が好きな奔放な女アイリスは複数の男性と同時に関係を持ちながら自由に生きている。 そんな彼女に一目ぼれしたのが大学で講師をしている男ジョン。 ほとんど目立たないクソ真面目男のジョンであるが、豊かな知性と魅力的な容姿を兼ね備えたアイリスに一目で恋をしてしまう。 彼女にリードしてもらって初体験も何とか終えるあり様である。 しかし、意外や意外彼女に一目惚れしたジョンの純粋さにアイリスは惹かれてしまう。 どう見てもミスマッチな二人だが、結婚してしまう。 その後アイリスは次々と小説を発表、一流の作家になる。 40年の歳月を経て、深く強固なものとなっていた二人の間に痴呆症と言う病魔が訪れる―――

 映画としては地味な内容で、決して強い印象を残すような映画ではない。 しかし考えさせられたなぁ。 ジョンのような愛し方もあるのだなぁと言う事である。 つまり、他々の男達がいるにも関わらず、その奔放な相手を純な気持を持ったままひたすら愛する男を通す、その男としてのあり方にである。 クソ真面目な男ジョンであっても男としてのプライドはある。 さして迫力もないのだが、その男としてのプライドをタテに彼女に自分を迫るところもある。 最後にそのクソ真面目男、頭は禿げかけていて、お腹はメタボ腹の始まり、ド近眼のメガネ男、のその純粋な愛を信じて、その男を最後は迷いなく選ぶ女・・・これが物語ならそんな話もありかなぁと思うが・・・しかし、まずこんな地味な話はハリウッドでは描かないよなぁ・・・でも、最後の最後まで・・・彼女が目を閉じるまで彼女をひたすら愛し、彼女を支えることを選んだ男の愛情を描いている。 
 派手な作品ではない、だが落ち着いてじっくり見れる、秀作というのはこういう作品のことである。